高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「『あいこカフェ』で」
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29:※歌としてお借りした元ネタは「トラベルナ」です、ご参考までに……。[sage saga]
2021/05/16(日) 14:46:07.36 ID:eE/KPeRw0
「〜〜〜♪ 〜〜〜〜〜♪」

 やがて歌が始まった。声の柔らかさがリズムを帯びて、少しずつ形を変えてゆく。
 森の奥で、妖精が楽しげに歌っているような――。
 そういえば、いつだったっけ。藍子のことをカフェに住む妖精とか、あるいは魔女だなんて冗談を言い合った。
 カフェの話をした時、だから……カフェのインタビューを受けた時? 藍子と一緒に、コラムの為のカフェ巡りをする少し前だよね。
 あれはただの冗談だったけど、妖精っていうのも、魔女っていうのも本当のことかもしれない。

「〜〜〜〜〜〜♪ 〜〜〜♪」

 元々の歌は、過酷ながらも素敵な旅を続けて様々な世界と出来事を大切に想い、一期一会の旅だからこそ出会いを尊ぶ物。それをかなりキュートでポップアレンジした楽曲を、さらに藍子が「音だけ」で表現する。

「〜〜〜〜〜♪ 〜〜〜〜♪」

 それを聞いた人たちが顔を突き合わせて、たまたま隣り合った人も目を合わせて、会話の渦が生まれ始める。
 気が付けば……藍子の全身から、何か気配のようなものが消え失せていた。ハイヒール程度の高さに登った時は、1人残らず目を惹き付けたのに。だけど、目を離し続けると何か落ち着かなくなる。また見たくなる……お客さんも私と同じで、顔を突き合わせつつも時に揃って藍子へと振り向き歌声に耳を傾け、またとりとめのない会話をする。

「〜〜〜〜〜♪ 〜〜〜♪」

 いつかカフェLIVEで表現した、魅力を叩きつける物とは全然違う……自然に融けた声と、つい目で追いたくなる幻想感……。

 カフェの音だ。

 そう気がついた時、私は顔だけを前に出して、そして、歯と歯の隙間を熱い息が通り抜けていった。


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