11:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 22:42:03.19 ID:2kLflUvfO
いくつかの交差点を通り過ぎて、
僕はほどなくその場所に辿り着いた。
12:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 22:45:31.12 ID:2kLflUvfO
彼女が歌うその姿は、一見するだけじゃあ
なんとも絵になりそうな綺麗な光景だった。
一見はね。
13:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 22:48:15.47 ID:2kLflUvfO
ギターの音色は途切れ途切れ、怪しい音がすぐ混入して、
歌の音程はすぐどっかに飛んで行ってしまいそうで、
まるでなんだか、死にかけた野良犬のうめき声みたいな演奏だった。
14:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 22:49:43.72 ID:2kLflUvfO
「何か用かい?」と、彼女は僕に尋ねた。
「路上ライブに感動でもしてくれたのかな」
そんなわけないだろ、と僕は思った。
15:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 22:52:35.47 ID:2kLflUvfO
「そうだ、強盗だ」
「あ、本当に強盗だったんだ」
16:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 22:54:43.15 ID:2kLflUvfO
「なんというか、まあ下策だね」
笑いながら彼女は言った。
「このご時世に、刺すだの殺すだのなんてさ」
17:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 22:56:10.63 ID:2kLflUvfO
彼女はゆっくりと歩いた。
僕は自転車を押してその後に続いた。
二人分の足音と自転車の車輪が回る音が、
夕暮れの無人の街に、やけに大きく響いた。
18:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 22:58:20.82 ID:2kLflUvfO
英語は苦手だったけれど、
冒頭の歌詞だけははっきり聞き取れた。
“バイバイ、ミス・アメリカンパイ”
19:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 23:01:08.28 ID:2kLflUvfO
***
十数分ほど歩き、暗くなる前に到着したのは似たような家が建ちならぶ住宅街で、
20:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 23:03:33.01 ID:2kLflUvfO
ギターを適当に床に転がして、彼女は僕の方を見た。
「お腹減ってるんだよね。なんか作ろうか?」
21:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 23:08:46.73 ID:2kLflUvfO
調理にそう時間はかからず、僕が待ちくたびれる前に彼女は料理を完成させた。
ダイニングテーブルに配膳されたのはシンプルな山盛りの牛丼で、
呼ばれて席に着くや否や、僕は一も二もなくがっついた。
87Res/55.83 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20