白雪千夜「アリババと四十人の盗賊?」
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155:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:56:46.11 ID:tRJaplXx0
 しかし、
「そうだ」
「ん」
「もう一つ、解けてない謎があるんです」

以下略 AAS



156:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:57:35.64 ID:tRJaplXx0
「私も絵画を見て推理するのが好きなんですよ」――推理? 美術の話だったのでは?「ところでプロフィールを見てみたら、千夜さんの趣味は料理≠ニ睡眠≠ノなってました。これは妙ですよ」

「変ですか。プロフィールなど、普通の書き方を知らないものですから」
「いえいえ、普通に書けてましたよ! ただ料理はともかく、睡眠は趣味って感じがしませんから。どうしても何か書かないといけなかったなら、美術鑑賞≠ノすればいい。そうしなかったのは、趣味というほど美術が好きではなかったからでしょうか? ……そこで、私の頭脳は最大の疑問を探り当ててしまったのですよ」

以下略 AAS



157:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:59:02.78 ID:tRJaplXx0
「千夜さんがお好きだとウワサになっているのは美術館≠ネのです。美術≠ナはなく! これは一体何を意味するのか? この些細な違いに事件を見出すのが探偵というものです! そう、パセリの沈んだバターを舐めるようにね!」

 都は得意げに言うーー成る程、探偵なのかもしれないな。
 彼女にかかれば、まったく、問題ばかりが山積みらしい。



158:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:59:47.95 ID:tRJaplXx0
「それで? 貴女は何を見出したのです」 
「分かりませんッ!」
 これも得意げだ。何も分からない事を明かして気勢を削がれない事こそ、千夜には分からない。
「分かりませんか」
「分かりませんでした! どうしてなんですか? 気になります!」
以下略 AAS



159:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 02:00:29.65 ID:tRJaplXx0
「謎ですか」
「大きな謎です! 面白いです! 白雪千夜には、謎がある」

 不躾なものだ。他人の内面にずけずけ踏み込み、暴いてやろうという試みだ。だが、と思う。彼女の瞳が求めているのは、ただ興味本位の知識欲を満足させる答えではないのだろう。仲良くなりたい、子供のような心でそう願い、相手を知りたいと望んでいる。都は仲良くない≠ウえ楽しい≠ヨの入り口にしてしまったのだ。そう思う。只今の問答に悪い気がしなかった事へ、理由を付けたかったのかもしれない。

以下略 AAS



160:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 02:01:05.60 ID:tRJaplXx0
 目を切ると、都は笑顔で千夜を覗き込んだ。やっぱり、やりづらい。そんな風に見ても何も出ないのに。ため息の牽制も、効果はなかった。
「私が美術ではなく、美術館を好きだといった理由を問いましたね」
「はい!」

「リトルなリドルですよ、そんなのは。別に教えてもいいのですが、またにしておきましょう。今は私にだって、解決すべき問題がありますから。それまではその謎を挑戦状にしておきます。自力で答えを見つけてみるのですね、探偵さん」
以下略 AAS



161:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 02:01:50.70 ID:tRJaplXx0
 寒くて眠れそうにないと言い、
「ココア淹れてよ」
「実際には」千夜はちとせに答える。「寝る際に暖めるべきは体の外側で、内側の体温を逃さなくてはいけないのですよ」

「へえ、流石千夜ちゃん」
以下略 AAS



162:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 02:02:28.99 ID:tRJaplXx0
「え、こないだのお礼? なんだー、気にしなくてよかったのに。ううん、ちょーだい。あ、これかー。杏、飴は手使わないで舐めたいのに、これったら棒が危なっかしいじゃない。ううん、ちょーだい。ありがと。杏さ、こないだこれ買ったの。ゲーセンのね、二百円入れたら四本出るやつ。いやルーレットで四本から七本出るって書いてはあるけど、結果出るのは四本なやつね。あれさ、筺にお金入れたら、一本ずつ取り出し口に落ちてくるのね。コトンって。一本目ね、バナナシェイク味。まー好きじゃないけど、あえて選べないやつで買ってるから。これも縁じゃない、バナナいいじゃない、って思って。で、次何出るかな、って。わくわくするよね。したっけ、コトンつって。バナナシェイク。ま、ま、ま、って感じ。こういう場合もあるよねって。いいじゃん食べよーよって。で、その次何出たと思う? 三本目。コーラとかあるじゃん。イチゴとか、いっぱい種類さ。コトン! バナナシェイク! 筺見るじゃん。これバナナシェイクの筺? 違うじゃん。《バナナシェイクしか出ません》って書いてある? いやない。ガラス越しに色んな味見えるじゃん。もう嫌じゃん。四本目に望みかけるじゃん。望みっていうか、もう王子様だよね。バナナに囲まれた杏を救ってくれーって。うん。コトンって出るじゃん、王子様。何だろ? バナナシェイク! わーお! バナナ王子バニラアイスまみれ! もうさ、せめて一本違うの出てくれたら、杏それが腐った卵味でもバンザイしたよー。…… いや、せん‼︎
 ……なので、イチゴくれて、ありがと。うまー」


163:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 02:03:37.63 ID:tRJaplXx0
 滔々たる杏の語りを聞きながら、千夜はバナナシェイク味を用意しておくべきだったと悔いた。どんな顔をしただろう。眉をひそめ、飴を睨み、歯を剥き出して、一旦しまって、それからほっぺたを膨らませて、ああ、ほっぺたを膨らませて……。

「あら、泡が立ってきたみたい……」

「ん」
以下略 AAS



164:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 02:04:27.61 ID:tRJaplXx0
 頃合いを見、頷いて合図を出す。三人が目を合わせ、一斉に啜った。

「うん、美味しい……」
 頼子は目を閉じ、神経を集中させた風に言った。
「いいカンジ」と杏。
以下略 AAS



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