1:milktea ◇FbOBNw0his[sage saga]
2020/10/24(土) 16:52:50.23 ID:bAY8bfVX0
・シャニマスのssです。
・既に書き終わっているのでまとめて投稿します。
なにか不備等ありましたら教えて頂けると幸いです。
それでは、よろしくお願いします。
SSWiki : ss.vip2ch.com
2:milktea ◇FbOBNw0his[sage saga]
2020/10/24(土) 16:55:20.24 ID:bAY8bfVX0
0.
「うう……ごめんな……こんなんで……雛菜、雛菜……」
3:milktea ◇FbOBNw0his[sage saga]
2020/10/24(土) 16:55:57.02 ID:bAY8bfVX0
他人の幸せがどのようなものかは難しくて分からないから、雛菜個人の幸せの定義に当てはめて考えることにした。雛菜の幸せの定義は簡単。天秤の左側に好きなものを置いて、右側に嫌いなものを置く。天秤が左側に傾いたら幸せで、右側に傾いたら不幸せ。甘いものは『好き』、苦いものは『嫌い』。学校は『好き』、宿題は『嫌い』。透先輩も小糸ちゃんも、プロデューサーも『好き』。円香先輩も……まあ、一応は『好き』。雛菜の幸せは『好き』、雛菜の不幸せは『嫌い』。
……じゃあ、雛菜じゃない人の幸せと不幸せは?
ガタン、と。天秤が傾く音を聞いた。
4:milktea ◇FbOBNw0his[sage saga]
2020/10/24(土) 16:57:05.13 ID:bAY8bfVX0
1.
「……痛い〜〜〜」
5:milktea ◇FbOBNw0his[sage saga]
2020/10/24(土) 16:57:39.20 ID:bAY8bfVX0
「ん〜〜〜?」
今日は火曜日、学校がある日。早起きは嫌い。だから学校の日は基本的に、もっと遅くアラームは設定しているんだけど……不思議に思いながら横目で机の上のカレンダーを見る。
「あ〜〜〜」
6:milktea ◇FbOBNw0his[sage saga]
2020/10/24(土) 16:58:28.26 ID:bAY8bfVX0
2.
「プロデューサー、おはようございます〜♡」
7:milktea ◇FbOBNw0his[sage saga]
2020/10/24(土) 16:59:37.93 ID:bAY8bfVX0
***
「そういえば」
「ん?」
8:milktea ◇FbOBNw0his[sage saga]
2020/10/24(土) 17:00:10.91 ID:bAY8bfVX0
信号が点滅する。そろそろ頃合いかな?
「ねえ、プロデューサー」
助手席から体を伸ばす。彼の耳元に両手を当てて。
9:milktea ◇FbOBNw0his[sage saga]
2020/10/24(土) 17:01:29.66 ID:bAY8bfVX0
3.
「……市川……市川!」
10:milktea ◇FbOBNw0his[sage saga]
2020/10/24(土) 17:02:10.49 ID:bAY8bfVX0
***
いつも寝てばかりいるけれど、世界史の授業は割と好きで、もっと正確に言うと先生の面白くない授業をBGMに読む資料集が好きだった。
多分テスト前の追い込みの時に日本語の曲を聞くと気が散るから、洋楽を聞くみたいな、そんな感じ。確か小糸ちゃんが言っていた気がする。
今日も適当に資料集のページを開いて、読む。開いたページには、昔に書かれた有名な本の神様についての説明が載っていた。多分前にも読んだことがあるけれど、気にせずに読み進める。
11:milktea ◇FbOBNw0his[sage saga]
2020/10/24(土) 17:05:49.11 ID:bAY8bfVX0
「……市川……頑張って起きていてくれたのは嬉しいが……ノートは……?」
「あ」
思考が霧散する。目線を上に向けて時計を見ると、2限も終わりの時間。少し目線を下げると、目の前には先生が立っていた。完全なデジャブ。
12:milktea ◇FbOBNw0his[sage saga]
2020/10/24(土) 17:07:41.72 ID:bAY8bfVX0
4.
『ねえ〜プロデューサー?最近嫌な事でもありました〜?』
13:名無しNIPPER[sage]
2020/10/24(土) 17:08:47.00 ID:qNbe7Y/DO
誤爆乙
14:milktea ◇FbOBNw0his[sage saga]
2020/10/24(土) 17:08:47.72 ID:bAY8bfVX0
***
「……雛菜?」
「……あ」
15:milktea ◇FbOBNw0his[sage saga]
2020/10/24(土) 17:09:51.85 ID:bAY8bfVX0
***
「ふう……ふう……雛菜さ、多分自分が思ってるより力強いから……はあ、死ぬかと思った……」
「……落ち着いた〜〜〜?」
16:milktea ◇FbOBNw0his[sage saga]
2020/10/24(土) 17:10:42.37 ID:bAY8bfVX0
「今回の企画のためにすごく準備して……理想にかなり近いプレゼンが出来たのに……なのに……全然取り合ってくれなくて……多分、最初から聞いてなかった……」
雛菜たちのユニットは最初の大きな番組での仕事で失敗をした。それも、たまたまミスをした、みたいな普通の失敗で無く、番組に反旗を翻すような失敗。
当然の成り行きで、雛菜たちの仕事は無くなった。それでも今こうしてアイドルとして活動できている理由は、『W.I.N.G』で優勝して多少上がった知名度がたまに仕事のオファーを連れてくるから。283プロの持っているチャンネルでの配信、なんてのもある。
17:milktea ◇FbOBNw0his[sage saga]
2020/10/24(土) 17:12:08.53 ID:bAY8bfVX0
あまりこの言葉は好きではないけど、彼の立場になって物事を考えてみると、気持ちは分からなくもなかった。
事務所の他のグループは地上波のリポート、化粧品の広告塔、ドラマ、その他様々な仕事で存在感を出している。そんな中で自分の担当しているグループは大半の予定がレッスンで埋まっている状態。
焦るのも無理はないだろうと思う。焦った彼が取った行動は単純で、仕事が来ないならこっちから仕事を取りに行くというものだった。それは水面に映る月を掴むようなもので、端的にいえば無駄だと雛菜は思っていたけれど、その予想は当たっていた。
ラジオのお仕事、クイズ番組、雑誌のモデル。多種多様なお仕事に雛菜たちを出してもらえないか交渉して、そのどれもが同じように却下されていった。もちろんそれを雛菜たちには言わないけれど、言外の部分で却下されたのだなと分かった。逆にいえば、それが分かるくらい彼は憔悴しきっていた。
18:milktea ◇FbOBNw0his[sage saga]
2020/10/24(土) 17:12:56.08 ID:bAY8bfVX0
「皆は頑張ってくれてるのに、俺だけ何も……!」
彼が憔悴したのは、自分の仕事が上手くいかない事の不甲斐なさと、それによって雛菜たちに事務所の他の人たちへの引け目を感じさせてしまう事への申し訳なさが原因で。きっと自分に厳格な彼は、自分のことを許す事が出来ないのだろうと思った。そのくらいの事は、雛菜でも分かる。だから。
「大丈夫。プロデューサーが頑張ってくれてるのもちゃんと知ってるよ〜?だから次は……」
19:milktea ◇FbOBNw0his[sage saga]
2020/10/24(土) 17:13:48.31 ID:bAY8bfVX0
***
「……ありがとう。少し落ち着いたよ」
「そっか〜〜〜良かった〜」
20:milktea ◇FbOBNw0his[sage saga]
2020/10/24(土) 17:14:28.16 ID:bAY8bfVX0
***
『ええ……?流石にそれは……なんていうか、ちょっと恥ずかしくないか……?』
『今この状況は恥ずかしくないの〜?』
21:milktea ◇FbOBNw0his[sage saga]
2020/10/24(土) 17:15:17.96 ID:bAY8bfVX0
***
「雛菜と一緒にいると幸せ」
彼の顔が少しずつ幸せで覆われていくのが分かって、それは雛菜といる時間が間違いなく幸せなものである事の証明でもあるから、少し嬉しくなる。体にふわふわとした浮遊感を覚えて、今なら宙に浮けるような気がした。
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