ロード・エルメロイU世の事件簿 case.封印種子テスカトリポカ
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名無しNIPPER
[saga]
2020/09/22(火) 20:18:28.24 ID:kGu0y7r00
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村と思しき場所に辿り着いたのは、3キロほど走った頃だっただろうか。時間にしてみれば数分というところだろう。数時間でも睡眠をとれたおかげか、あるいはマナの濃密さゆえか、不思議なほど疲労
は感じない。
その村は密林の中にあった。ほとんど開拓はされておらず、木々の合間に木造の小屋の様な家がぽつぽつと立ち並んでいる。
ティガーは途中で見失ったが、その頃には既に自分単独でも村に辿り着くのは難しくなくなっていた。
村が燃えている――ティガーが走り出す前に叫んだ言葉だが、目の前に広がっているのはその通りの光景だった。
炎の赤い光が夜の闇を駆逐している。轟々と燃え盛る灼熱は空に届く勢いで、周囲の木々を舐めまわしていた。
発生した気流が自分の頬を撫で、さらに漂う煙が喉の奥を刺激してくる。
「これは……」
「寝煙草が原因、ってわけじゃあなさそうだな」
大鎌に変じたアッドの軽口も、今は耳に入らない。
ただの炎ではない。それは神秘を宿した炎だった。それも、現代の魔術で可能な深度ではない。
グリム・リーパーの柄を強く握りしめる。下手人が誰にせよ、尋常一様の相手ではないだろう。
最善は、ティガーを見つけて可能な限り迅速にこの場を去ることだ。
だが、その時。
「逃げろ、逃げろぉ! 村人を連れて森の中へ逃げるんだ! 勝てるわけがない――!」
熱で木がはじける音に紛れて、声が響く。
聞こえてきた方向へ目を向ければ、声の主と思われる人影を認めることができた。
正確な年齢は分からないが、声を聴く限りどうやら若い男のようだ。高熱で揺らめく景色に紛れるかの如く、肥満気味の身体をふらふらと不安定に揺らしながらこちらへ逃げてくる。
そういえば、と調査隊のメンバーが先に村へ入っていたことを思い出す。目の前の人はそのひとりだろう。
一息に距離を詰め、事情を聴くために声をかける。
「大丈夫ですか!?」
「だ、誰だ、お前は?」
「合流する予定だった、ロード・エルメロイU世の内弟子です。調査隊の方ですか?」
近づいてみると、人相がようやく把握できてくる。金髪を後ろに撫でつけた若い――若すぎる男だった。少年と言った方がいいだろう。伸ばしている途中らしい髭のせいで分かりにくいが、ライネスと同じく
らいか、あるいはそれより年下かもしれない。
調査メンバーの資料については私も一通り目を通していたが、こんなに若い参加者はいただろうか? 師匠なら全て完全に暗記しているだろうが……
そんな疑問を余所に、少年は怯えるように視線を彷徨わせながら畳みかけてくる。
「くそっ、お前たちがもっと早く来ていれば……いや、同じか。魔術師がいくらいたってどうにかできるものじゃ――」
「教えてください。一体何が?」
「"テスカトリポカ"だ! あれは――」
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