ロード・エルメロイU世の事件簿 case.封印種子テスカトリポカ
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32:名無しNIPPER[saga]
2020/09/22(火) 20:20:25.53 ID:kGu0y7r00

 その単語の意味を思い出そうとした、瞬間。

 少年の表情が恐怖に歪んだ。見開かれ、顕になった瞳には、濃い絶望の色が塗りたくられている。視線の先は自分の背後。同時に、熱と殺気と強大な神秘の気配を感じた。

「グレイ、後ろだ!」

「っ、第一段階応用限定解除!」

 アッドの鋭い声。咄嗟に振り向きながら死神の鎌を大盾に組み替えて防御を試みる。

 構えた大盾の向こう側に見えたのは、巨大な炎の塊だった。凄まじい勢いでこちらに吹っ飛んでくる。回避は不可能。大盾の選択は正解だった――

 そう思ったのも束の間のこと。

 炎塊は直前で軌道を変え、地面に着弾・炸裂した。直撃ではない。それなのになお、まるで爆発したかのような衝撃をこちらに伝えてくる。

「っ!?」

 それは夜空から流星が降ってきたようなものだった。地面が爆砕し、吹き上がる。絶大な力に抗えもせず、自分の身体は宙を舞った。

 強化したバランス感覚でなんとか空中で身を捻り、足から着地する。ブーツの底がざりざりと地面を削る音。数メートルを滑り進んでようやく停止する。

 外傷はない。衝撃波の大半は大盾が散らしてくれていた。だが盾以外を選択していれば、おそらく骨の一本や二本では済まなかっただろう威力に戦慄する。

「うわああああああ!?」

 悲鳴と、視界の端に動くものを認める。どうやら少年も吹き飛ばされたらしい。勢いそのままに木の幹に直撃し、何やら嫌に重い音を立て、そのまま地面に転がる。ぴくりともしない。

 打ち所が悪い。あの速度で腹部を打ったのなら、最悪内臓が破裂している。

 だが少年を慮る余裕はなかった。何故なら、襲撃者は目の前にいたからだ。

 視線を先ほどまで自分がいた場所へ向ける。そこには炎の塊が着弾した衝撃で小さなクレーターができていた。

 いや、正確には"着弾"ではない。"着地"だ。

 クレーターの中心にうずくまる、炎の塊が身を起こす。

 それは、ヒトガタが炎を纏ったカタチだった。


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