ロード・エルメロイU世の事件簿 case.封印種子テスカトリポカ
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33:名無しNIPPER[saga]
2020/09/22(火) 20:21:18.92 ID:kGu0y7r00

「……っ」

 思わず息を呑む。じわりと汗が浮かぶが、それは熱からくるものではない。紛れもなく"最悪"に直面した。その感覚に背筋が粟立っていた。

 もう死んでいるかもしれない少年が口にした言葉。この地における神の一柱の名称。

 だがそれを耳にしてなお、『神霊』と遭遇するなんて出鱈目を受け入れることはできなかった。

 神秘の暴威に足が竦む。だが、それはこちらを威嚇しているわけでもないのだ。ただそこにあるだけで全てを圧倒する。存在としての格の違いを強制的に理解させられる。

 揺れる紅蓮のヴェールの向こう側には、紛れもなくあのアルビオンの深淵で遭遇した神霊イスカンダルに勝るとも劣らない神性が存在していた。

 テスカトリポカ。これから赴く予定だった遺跡に祀られていた筈の、夜を司る悪神。神霊イスカンダルのように人が至ったものではなく、最初から神として讃えられたモノ。

 何故、現代に至ってそれが存在しているのか――いられるのか、理解はできない。

 だが確かにそれは目の前にあるのだ。ぎゅっ、と縋る様に大盾となったアッドの持ち手を握りしめた。

「アッド……」

「イッヒヒヒ! まさかあれとやり合うなんて考えちゃいねえよな? とっとケツ捲って逃げるのが正解だぜ!」

 口ではそう言うが、あれに背を向けたところで逃げ切れないのはアッドの方がよく理解しているだろう。

 遺跡にこんなものがいたのだとすれば、これまでの調査隊が誰一人生還しなかったというのも頷ける。戦って倒す、どころの話ではない。戦うことすら難しい。そんな手合い違いぶりだ。

「それでも、やるしかありません」

 大盾越しに、全神経を集中して敵を見つめる。マナを限界以上に取り入れて、魔術回路を過剰に回し続けた。身体が端から崩壊していくような痛みと怖気を覚えるが、抵抗も出来ずに死ぬよりはましだ



 警戒を続ける。だが――

 敵の見せた行動は、思いもよらないものだった。

 いや、正確に言うならば、それは何の行動も見せなかったのだ。

「……」

 対峙した炎の人型は、明らかにこちらを認識しているにも関わらず、追撃をかけてこなかった。

 頭部らしき部位をこちらに向けてはいる。だがそこから放たれる気配は敵意や殺気ではなく――

(困惑……?)

 得た感触に無理やり名前を付けるなら、それがもっとも適当である気がする。



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