371: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/10/11(日) 20:45:52.59 ID:Plru0K4UO
その日のモリブスは、小雨が降っていた。雨除けの外套が、俺たちの顔をすっぽりと隠している。
外套から滴る雨がうざったいが、姿を見られてはいけない俺たちにとっては僥倖かもしれない。
「どこに行くの?やっぱり、ベーレン侯の私邸?」
372: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/10/11(日) 20:46:19.46 ID:Plru0K4UO
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「……私にかかってる?」
プルミエールが、意外そうに言った。ジャックは首を縦に振る。
373: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/10/11(日) 20:47:07.83 ID:Plru0K4UO
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そして俺たちはモリブスの市街地に来た。2回の「時間遡行」で疲弊しているデボラと、万一の時の守りに必要なシェイドは残している。
強行突破という手はなくはない。ただ、犠牲が出る可能性も決して低くはない。俺一人ならそれでもいいが……プルミエールとエリザベートがいる以上、あまり無茶もできなそうだ。
374: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/10/11(日) 20:47:46.55 ID:Plru0K4UO
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彼女たちが去って半刻。弱っていた件の野良猫が、ベーレン侯の私邸に入っていくのが見えた。
回復魔法でもかけてもらったのだろうか、多少は元気そうになっている。猫の首輪には筒のようなものがある。あれが肝だ。
375: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/10/11(日) 20:48:24.97 ID:Plru0K4UO
ゾクン
376: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/10/11(日) 20:49:36.44 ID:Plru0K4UO
俺の右に、巨大な質量が振り下ろされた!!?右手は……ある。何とか交せた、か??
377: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/10/11(日) 20:50:15.79 ID:Plru0K4UO
こいつが「シェリル」なのかは分からない。ただ、確実に言えるのは……こいつとやりあっていては、ラスカ夫人を取り逃がすだろうということだ。
378: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/10/11(日) 20:50:46.69 ID:Plru0K4UO
ラスカ夫人がこちらに気付いた。彼女は既に馬上の人だ。このままでは取り逃がす!!
379: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/10/11(日) 20:52:00.91 ID:Plru0K4UO
「加速(アクセラレーション)20、『閃』!!!!」
380: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/10/11(日) 20:52:32.64 ID:Plru0K4UO
風景が一瞬のうちに切り替わる。身体はクソ重いままだが、それでも普段の「5倍速」ぐらいの速度では動けているようだった。
馬を蹴り飛ばし、鞍の上にいる夫人を小脇に抱える。懐から「転移の球」を取り出し、地面へと投げ付けた。
381: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/10/11(日) 20:53:00.65 ID:Plru0K4UO
女が、外套を上げた。見えたのは……妖艶に歪む、褐色の笑みだ。
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