372: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/10/11(日) 20:46:19.46 ID:Plru0K4UO
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「……私にかかってる?」
プルミエールが、意外そうに言った。ジャックは首を縦に振る。
「そうだ。お前の『追憶』。この数日の修練で、少しは進化したはずだ。
土の精霊の力を借りて土地の記憶を呼び起こし、水晶玉に反映させるのがこの魔法の骨子だ。
そして、マナの運用幅が修練で広がったことで……呼び起せる対象も広がっているだろう」
「というと?」
「土の精霊を人に一時的に宿らせる。そして、本人が『見た』ものを反映させることもできるはずだ。
今の『追憶』は、その場所で起きた出来事しか再生できない。
対象を土地ではなく人にすることで、運用の幅が広がるというわけだ」
「……でも、それって……本人の同意が必要では」
「必ずしも必要じゃない。極論、死んで『物体』となっていても運用は可能だ。むしろ、そっちの方が分かりやすい」
プルミエールの顔色が変わった。こういうことに対する耐性は、彼女にはない。恐らく、一生付きそうもないだろう。
「……誰かを殺せ、とでも??」
「意識を失っている状態であればいい。要は、物体に近い状態であればいいんだからな。同意があれば当然可能だが」
「なら、ベーレン侯に使えばいいじゃないか。同意は当然得られるだろう?」
デボラの言葉に少し考えた後、ジャックが否定した。
「いや、ジョイスの肉体は朝方の状況に戻っている。つまり、この肉体は『乗っ取られた』時のことを『覚えていない』。だから、真相を探りたいならば……」
「俺の嫁、ってことたい」
「そうなるな。だが、良いのか?」
「ちょっとやそっとじゃ死なんちゃ。遠慮せずやっていいたい」
「となると……」
ジャックが俺を見た。
「荒事になりそうだな」
「あ、くれぐれも殺しだけはやめてくれんか。極力、誰も傷つかんようにしたいんよ」
「分かってるさ、ベーレン侯」
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