371: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/10/11(日) 20:45:52.59 ID:Plru0K4UO
その日のモリブスは、小雨が降っていた。雨除けの外套が、俺たちの顔をすっぽりと隠している。
外套から滴る雨がうざったいが、姿を見られてはいけない俺たちにとっては僥倖かもしれない。
「どこに行くの?やっぱり、ベーレン侯の私邸?」
「それが一番手っ取り早いな。まず、誰がベーレン侯の妻を『操ったのか』を探る必要がある。ただ……」
「既に全員操られてるかもしれない……そういうことね」
俺はプルミエールに頷く。シェリルの力は全くの未知だ。ただ一つ言えるのは……
「シェリルの『憑依』は、私やビクターのと違う。同時に、複数に、しかも本人を介さず広げられる……まるで病原菌か何かみたい」
「『憑依』の発動条件って?」
「私の場合、しばらく対象に触る必要があるの。大体、10秒ぐらい。『憑依』の間、本人は意識を失うけど。でも、シェリルも同じなのかは分からない」
エリザベートがポツリと言う。まだ、ランパードのことが気掛かりらしい。
「その通りだ。だから、探らねばならないのはまずは『手段」。そして『加害者』。
そいつがシェリルと特に繋がりの深い『中枢』であればいいが、多分そうじゃないだろうな」
ランパードは2日前、俺たちにこう言い残していた。「シェリルは自分の石を完璧に反映させる『中枢』を介して影響力を広げる」と。
ただ、どうやって影響力を広げていたかは遂に奴も分からなかったようだ。だからこそ、奴は「中枢」を見つけるのにこだわっていた。
「『中枢』を殺せば、『憑依』の効果が全て消える」からだ。
恐らく、奴はその特定に手間取っている。あるいは、特定できたが脱出が難しい状況に陥っている。
奴が死のうが生きていようが俺にはさほど関心がない。ただ、プルミエールは悲しむだろう。そして、エリザベートも。
だから、俺たちが代わりにやらねばならない。鍵になるのは、ジャックの言っていた通り……プルミエールだ。
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