21: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/08/07(金) 21:59:51.48 ID:S0Anv1g5O
コポコポコポ…………
実験室のケトルが音を立てている。私は急須にお茶の葉を入れた。
「プルミエール、ちょっといいかしら?」
22: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/08/07(金) 22:00:54.58 ID:S0Anv1g5O
「深き地の中より生まれ出る者
悠久の時を生き続ける者
汝に感謝と我が願いを伝えん
23: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/08/07(金) 22:01:56.43 ID:S0Anv1g5O
#
「にしても、大分こなれてきたわね。今までにない魔法であるのは確かだわ」
ズズッ、とアリス教授がお茶を啜った。私はマロングラッセの代わりに、エリザベートの故郷の土産「セベー」を齧る。少ししょっぱいけど、トリス茶にはそれがよく合う。
24: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/08/07(金) 22:02:38.97 ID:S0Anv1g5O
私の生まれは大陸北東部のテルモン皇国だけど、叔父夫婦の死の後は南西のアングヴィラ王国で育った。
記憶を失ったままの私を、たまたまテルモンを訪問していたクリス・トンプソン宰相が拾ったのだ。
そして、私は彼の庇護の元育てられた。オルランドゥ魔術学院に入れたのも、彼の口利きがあってのことだ。
私に父の記憶はほとんどない。だけど、トンプソン宰相は……私にとっては、親も同然だ。
25: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/08/07(金) 22:03:32.70 ID:S0Anv1g5O
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お茶の後の微妙な空気は、1人の闖入者によって破られた。
「教授!プルミエールさんっ!お茶にしましょ!」
26: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/08/07(金) 22:04:07.32 ID:S0Anv1g5O
「『魔王』?……ズマのハンプトン大魔候、ではなくて?」
エリザベートが声を潜める。
「違いますよ。モリブスに、自称魔王が出たそうなんです」
27: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/08/07(金) 22:05:01.40 ID:S0Anv1g5O
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私の家は、オルランドゥ魔術学院から歩いて10分ぐらいの所にある。
家からはオルランドゥ大湖が近い。マナに溢れたあの湖畔を歩くと、それだけで力が湧いてくる気がする。
28: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/08/07(金) 22:05:31.24 ID:S0Anv1g5O
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「じゃあカトリさん、また〜」
「プルミエール、足元には気を付けてねえ」
29: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/08/07(金) 22:06:16.33 ID:S0Anv1g5O
…………ザッ
30: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/08/07(金) 22:07:27.15 ID:S0Anv1g5O
「動くな」
31: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/08/07(金) 22:08:09.14 ID:S0Anv1g5O
その刹那だ。
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