21: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/08/07(金) 21:59:51.48 ID:S0Anv1g5O
コポコポコポ…………
実験室のケトルが音を立てている。私は急須にお茶の葉を入れた。
「プルミエール、ちょっといいかしら?」
「あー、すみません!すぐお茶を……」
「そうじゃなくって。お菓子がないのよ、テルモン産のマロングラッセ」
向こうからアリス・ローエングリン教授の困惑した声が聞こえた。ケトルの火を氷結魔法で消し、彼女がいる書斎へと向かう。
「え?そこの戸棚にあったはずじゃ」
「ないのよそれが。せっかく楽しみにしてたのに……」
「私は食べてないですよ?」
「分かってるわよ。あなたはそんなことしないもの。ここに今日来た可能性があるのは……」
「……エリザベートですね。あの娘、本当に食い意地が張ってるから……」
アリス教授は笑いながら肩をすくめた。
「あら、決めつけはよくないわよ?そういうときのためのあなたの魔法じゃないの」
「ああ……それもそうですけど。でも、まだまだ改良が必要で」
「だからこそよ。学会発表前の予行演習と思って、見せてごらんなさいな」
私は口を尖らせた。私の同僚、エリザベート・マルガリータは天真爛漫だけど少し常識を欠いたところがある。トリス王家の出らしいけど、もう少しなんとかならないかしら。
まあ、とりあえずの確認……ということでいいか。
「教授が最後にマロングラッセを確認したのは?」
「そうねぇ、2時間ぐらい前かしら。氷結魔法を緩めに戸棚にかけておいたのよね。
そして講義のために席を外したから……貴女が来たのは?」
「30分前ですね。じゃあ、その間ってことですか」
私は水晶玉を取り出し、そこにマナを通していく。小さく、地の精霊に働き掛ける詠唱を始めた。
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