2: ◆TOYOUsnVr.[saga]
2020/05/21(木) 19:34:29.08 ID:wq3E2ozi0
「きっと初対面の私って、とっつきにくいと思うのよ」
「んー。そうかなぁ。ウチは平気だったけど」
「アナタは誰に対しても物怖じしないじゃない」
「そうかも」
3: ◆TOYOUsnVr.[saga]
2020/05/21(木) 19:36:32.83 ID:wq3E2ozi0
「ちなみに、どうして私が悩んでるってわかったの?」
「あれ、自覚ない?」
「?」
「夏っちゃんさぁ、結構顔に出るよ? 寂しいときしゅん、って顔するの」
4: ◆TOYOUsnVr.[saga]
2020/05/21(木) 19:37:36.79 ID:wq3E2ozi0
「夏っちゃんのプロデューサーさんは迷惑そうな感じなの」
「迷惑……迷惑なのかしら。よくこう言うのよね」
「なんて?」
「自分の時間を大切にしてくれ、って」
5: ◆TOYOUsnVr.[saga]
2020/05/21(木) 19:38:29.09 ID:wq3E2ozi0
「……ここぞで開け」
「そう! ここぞで開け!」
「ここぞ、っていうのはどういうときになるの?」
「それはもう、夏っちゃんが寂しいなー、を一番感じた瞬間だよ」
6: ◆TOYOUsnVr.[saga]
2020/05/21(木) 19:39:30.44 ID:wq3E2ozi0
〇
撮影のお仕事は想定していたよりも長引いて、夕食を食べるに適した時間からも、朝食を摂るのに適した時間よりも遠い、中途半端な暗闇へ私は放り出される。
遅くなる、とは聞かされていたけれど、ここまでとは。
7: ◆TOYOUsnVr.[saga]
2020/05/21(木) 19:40:35.88 ID:wq3E2ozi0
送られてきていた二枚の写真を保存して、ぼうっと眺める。
すると、私はあることに気が付いた。
もしかしなくても、カトレアをプロデューサーに預かってもらってしまっている。
8: ◆TOYOUsnVr.[saga]
2020/05/21(木) 19:41:15.19 ID:wq3E2ozi0
『お疲れ様。……にしても、押したなぁ』
「今は放クラ唯一の午後十時以降も働けるアイドルだもの。これくらいどうってことないわよ」
『頼もしい限りだよ』
「そんなことより、ごめんなさい。カトレアが迷惑かけてない?」
9: ◆TOYOUsnVr.[saga]
2020/05/21(木) 19:41:41.30 ID:wq3E2ozi0
『夏葉』
しかし、期待に反して彼の声のトーンは一段落ちて、短く私の名前を呼ぶ。
10: ◆TOYOUsnVr.[saga]
2020/05/21(木) 19:42:12.15 ID:wq3E2ozi0
――ここぞで開け!
11: ◆TOYOUsnVr.[saga]
2020/05/21(木) 19:43:07.89 ID:wq3E2ozi0
プロデューサーに「少し待って」と言い、鞄を漁る。
そして私は、例の文庫本ほどのサイズの外国語の辞書を取り出した。
カバーを外しポストイットが挟まれているページを、ぱかりと開く。
12: ◆TOYOUsnVr.[saga]
2020/05/21(木) 19:43:34.39 ID:wq3E2ozi0
『俺ほど、友達想いの人間もそうはいない』
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