有栖川夏葉「ここぞで開け!」
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3: ◆TOYOUsnVr.[saga]
2020/05/21(木) 19:36:32.83 ID:wq3E2ozi0

「ちなみに、どうして私が悩んでるってわかったの?」
「あれ、自覚ない?」
「?」
「夏っちゃんさぁ、結構顔に出るよ? 寂しいときしゅん、って顔するの」
「…………本当に?」
「マジだって。そんでさっき、しゅんってしてたから何か寂しいことでもあるのかな、って」
「敵わないわね」
「洞察力、高めです」
「じゃあ、聞いてもらえるかしら」
「解決してあげられるかはわかんないよ。全知全能じゃないからね」
「ええ。全知全能だったら第二外国語の単位、落としそうにならないもの」
「まーだ、それでイジる?」
「ふふ。冗談よ」
「冗談で古傷抉んないで」

彼女は過去に、履修していた第二外国語の期末考査の際に、辞書の持ち込みが許可されていることをすっかりと忘れ、筆記具のみで挑み、単位を勝ち取っている。
私はこのエピソードこそ彼女の能力の高さを物語っていると思うのだけれど、彼女としてはかなり肝を冷やした思い出であるようで、このように苦い顔をする。

「今日も持ってるよ。戒め」

言って彼女は鞄から、文庫本ほどのサイズではあるものの確かな厚みのある辞書を取り出す。
曰く、戒めのために卒業まで持ち歩くのだとか。

「それで、話が逸れたけどさ。なんなの、悩んでること」
「大したことじゃないのよ?」
「いーから」
「何から話せばいいのかしら……。ええ、と。さっき私のプロデューサーが送り迎えしてくれる、っていう話があったでしょう?」
「うん」
「プロデューサーはそんなふうなのに、私がオフやお仕事終わりで時間を使って会いに行くと、全然嬉しくなさそうなのよ」
「えー。それはないでしょ」
「それを思うと、どうにも……さっきアナタが言ったとおり寂しく思えてしまうのよね」

私が言い終わると、彼女は腕を組んで「んー」と唸る。
当事者ではない彼女にこんな話をするのもおかしなものだと自分で思うが、彼女なら何らかの答えを出してくれるのではないか、と少し期待もしてしまう。



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