33:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 16:56:40.33 ID:O0jAO63X0
エミリー「……なんですか、このお話は」
まつり「鬼に息子を食われた母親がいつしか創作し、次の標的の母親へと伝え受け継がれていったという物語なのじゃ。他の藩でもお伽噺として親しまれているそうなのじゃ」
まつり「実際村には恵みがもたらされておる。心優しき男の子は村を救った英雄ともいえよう。そう捉えれば、この物語もある意味では的を射ているのかもしれんのじゃ」
34:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 16:57:11.23 ID:O0jAO63X0
まつり「ふむ。エミリーよ。余が見込んだとおりじゃった。大和撫子とはかくあるべきという姿、見せてもらったのじゃ」
まつり「これからの時代、女性たちがそなたのように強く凜々しく美しく輝けるよう、余も大名として精進せねばならぬのじゃ」
まつり「エミリーよ、そなたはまことに天晴なのじゃ!」
35:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 16:57:47.50 ID:O0jAO63X0
――翌朝
紬「あなたがエミリーさんですね。お話は伺っております」
36:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 16:58:19.91 ID:O0jAO63X0
エミリー「それでは、まずどのような修行から入ればよろしいでしょうか」
紬「いいえ。厳しい修行は必要ありません。そもそも鬼とは地獄の住人。私のような祈祷師であっても単独で挑めば勝ち目はないでしょう」
エミリー「そ、そんな!」
37:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 16:58:51.70 ID:O0jAO63X0
――期限の晩、美里恩村 長老の家
ひなた「……」
38:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 16:59:34.61 ID:O0jAO63X0
ひなた「10年前に貯めておいた在庫もあとわずか……それが売れたら、もう兄ちゃんが遺してくれたものは村から一つ残らず消えてしまう」
ひなた「長老、みんな……本当にこれで良いと思ってるのかい? それでも育吾郎さんを、兄ちゃんと同じ目に遭わせるのかい?」
ひなた「あたしの兄ちゃんが命を投げ打って守りたかった村は……こんな村だったのかい?」
39:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 17:00:16.21 ID:O0jAO63X0
長老「儂が今日まで生きてきたこの美里恩村の良きところは、村人が皆博打などを好まぬ堅実な働き者ばかりなところじゃ」
長老「人が未来を見通すことはできぬ。じゃが若者の未来を信じることは愚かな賭けじゃろうかのう」
村人たち「……」
40:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 17:00:56.11 ID:O0jAO63X0
――芙美台山麓
エミリー「……」
41:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 17:01:32.22 ID:O0jAO63X0
エミリー「大丈夫です。私が必ず、育吾郎さまをこの村へ連れ戻してみせます。どうか見守っていてください」
ひなた「だけども、あたしにもエミリーちゃんの力になれることがないかと思って……それで、これを」
エミリー「これは……お守りですか?」
42:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 17:01:58.21 ID:O0jAO63X0
まつり「いや、それだけはさせんのじゃ」
ひなた「あ、あなたは?」
まつり「ふふっ。余は通りすがりの貧乏旗本の三男坊、徳田松之助なのじゃ。心配せんでも、エミリー殿の身は余とこちらの祈祷師の先生が守るのじゃ」
43:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 17:02:39.19 ID:O0jAO63X0
――芙美台山、中腹
エミリー「おや?」
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