【デレマス】夢見りあむの、尊さについて。
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28: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2020/02/10(月) 01:13:12.05 ID:CDwt0mRk0

「行きたくないなぁ」

 仕事に。

以下略 AAS



29: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2020/02/10(月) 01:13:56.52 ID:CDwt0mRk0

* * *

 酸っぱいにおいと、むせかえるような不味さと、ただただ不快な感触が、喉の奥から唇の端、鼻の中までいっぱいに詰まる。反射的に口元を抑えたけれど、すぐに半固形のゲロはぼくの指のあいだから絨毯へと零れ落ちていった。
 片付けなきゃ、とか、洋服が、とか、病院にいかないと、とか。そんな発想はぜんぜん浮かんで来なくて、ぼくはまず、とにもかくにもPサマに連絡しなきゃって思った。連絡して、ごめんなさい、お仕事いけないです、って。
以下略 AAS



30: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2020/02/10(月) 01:14:45.87 ID:CDwt0mRk0

 アイドルはとかく素晴らしい。彼ら彼女らは、ビジュアルの美しさやカッコよさ、あるいは歌唱力やその抜群のパフォーマンスで観客を魅了する。
 同時にぼくは思う。「だからこそ」尊いのではない。尊くあれる存在「こそが」アイドル足りえるのだと。
 観客のために努力をして、汗水たらし、ひたむきに、頑張って、歯を食いしばり、涙を堪え、誰かを助け、そして助けられ、自分と、自分を見てくれるひとたちのために研鑽された宝石がアイドルの輝きの正体なのだ。

以下略 AAS



31: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2020/02/10(月) 01:16:06.53 ID:CDwt0mRk0

「どいつもこいつも節穴ばっかりだ! ぼくがなんか頑張ったか? 頑張ったかよぅ! 輝いてたか? 尊かったか? そんなわけない! みんなみぃんなぼくのことなんか見てやしないんだ!」

 注目を浴びたかった。ちやほやされたかった。承認欲求を満たす手段があれば、すぐにそれに飛びついた。
 けれど、違う。違うんだ。ぼくのこの憤りは、そんなところに根差していない。
以下略 AAS



32: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2020/02/10(月) 01:19:42.87 ID:CDwt0mRk0

 みんながぼくのことをアイドルと評した。
 ぼくはぼくのことをアイドルだなんて思えなかった。

「凄いアイドルが! 尊さじゃなくてお祭り感覚で決まるっていうんなら! 努力なんてムダムダの無じゃん! アイドルってなんなんだよぅ!」
以下略 AAS



33: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2020/02/10(月) 01:20:56.50 ID:CDwt0mRk0

 時間の感覚は麻痺していた。だから、Pサマがやってきたのが、それから十分後なのか二十分後なのか、はたまた一時間後だったのか、どうにも曖昧の中へと沈んでいる。
 ぼくはゲロの海の中に沈んでいた。つんとした刺激臭が鼻を刺す。それでも動く理由にはならなくて、髪の毛や肌を掻き毟りたくなる衝動を必死に抑えるので精一杯。
 Pサマはそんなぼくを一目見て、「ひでぇな」とぽつり、呟いた。その意見にはぼくも同意だった。

以下略 AAS



34: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2020/02/10(月) 01:21:57.13 ID:CDwt0mRk0

「ごめんね。ごめんなさい。Pサマ、ぼく、アイドルやりたくない。やれない。やれないよぅ。もうやだ。こんな思いするなら、アイドルなんてやらなきゃよかった。Pサマのスカウト、断ればよかった」

 顔が熱い。視界が歪む。
 泣きたくなんてないのに、悲しくも悔しくもないのに、そのはずなのに、涙が零れて止まらない。ぽろぽろぽろぽろゲロへと落ちる。
以下略 AAS



35: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2020/02/10(月) 01:23:20.45 ID:CDwt0mRk0

 肌に触れているのはPサマのコート。くたびれた、しわくちゃの、小汚い。その内側には男性的な、少し筋肉質の肉体が感じられる。ぼくのおっぱいがPサマの胸板で潰れていて、起き抜けだったから下着をつけていないことを思い出したけど、恥ずかしさは不思議とあまりない。

 ぼくが背中に手を回したので、密着度合いは一気に増している。Pサマの右手がぼくの後頭部へ、左手がぼくの右肩へ、それぞれ痛いくらいの力。

以下略 AAS



36: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2020/02/10(月) 01:24:48.54 ID:CDwt0mRk0

「駆け出しの、五人だったころからだ。途中、一人が辞めたいと言った。自分がしたかったのは、こんなことじゃないと。俺は止めた。他の四人も止めた。だけど、あいつは結局辞めちまった。
 ……違うんだ。わかってるんだ。俺も、他の四人も、本気で止めながらも、止める気なんてなかった。辞めることは知っていた」

 ぼくは脳内のデータベースを漁る。……確か、辞めた理由はぼかされていたはずだ。
以下略 AAS



37: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2020/02/10(月) 01:26:23.79 ID:CDwt0mRk0

「だけどそんなもんじゃねぇのか。アイドルに限ったことじゃねぇだろう。どんな仕事だってそうだ。誰かがやりたくないことをやって金がもらえる。違うか。りあむ」

「違うよ、Pサマ」

以下略 AAS



38: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2020/02/10(月) 01:27:58.75 ID:CDwt0mRk0

「ははっ」

 Pサマはぼくの言葉を受けて笑った。普段無愛想な顔が、いまは耳の後ろにあって見えないけれど、きっと、多分、確実に、絶対、満面の笑みを浮かべているようだ。

以下略 AAS



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