スタートダッシュ
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15:名無しNIPPER[saga]
2020/02/09(日) 02:28:46.66 ID:QhrXPTvL0

『私は、楽しいよ』

『え?』

以下略 AAS



16:名無しNIPPER[saga]
2020/02/09(日) 02:29:19.86 ID:QhrXPTvL0

 あの出来事から一年と一月が経過しても、わたしは変わらず彼女のことを考えて、トラックを走る彼女を眺めていた。
 購買ですれ違って以降、彼女と正面から顔を合わせる機会は一度もなかった。クラスが違うし、あまり校内を出歩かなければ当然。
 変わったことと言えば、購買のお姉さんと話すようになったことくらい。今までよりも豆乳が売れるようになったらしい。

以下略 AAS



17:名無しNIPPER[saga]
2020/02/09(日) 02:30:19.39 ID:QhrXPTvL0

 彼女はわたしの姿を捉えてまた何か言いたげに口をぽかんと開けたけれど、この前みたいに足を止めることはなかった。
 でも、わたしが振り向くと彼女もこっちを振り向いていた。目が合うと、なぜかそっぽを向かれる。

「あのさ」
以下略 AAS



18:名無しNIPPER[saga]
2020/02/09(日) 02:30:47.25 ID:QhrXPTvL0

「本気で言ってる?」

 彼女は本当に困惑したように表情を硬くする。間髪入れずに頷きを返すと、彼女は見て分かるくらいに狼狽えた。
 ゆらゆらと、短い髪が揺れる。その拍子に見えた耳元と、首筋が、ほのかに朱色に染まっていた。
以下略 AAS



19:名無しNIPPER[saga]
2020/02/09(日) 02:31:19.54 ID:QhrXPTvL0

 もっともらしい理由が一つでもあれば、多少は自分を偽ったりもできるのだろうと思う。

 そうすることが選べてそうするのと、そうせざるを得ないからそうするとではまるっきり違う。
 自分のことは自分が一番に分かっていて、だからこそ周囲には隠して、がんばって取り繕おうとしていた部分もあった。大抵わたしが我慢したり黙っていれば済むことなのだから、わざわざ他者の手を煩わせるわけにはいかない。自分のことには自分で責任を負いたい。この程度のことなのだから。
以下略 AAS



20:名無しNIPPER[saga]
2020/02/09(日) 02:32:11.26 ID:QhrXPTvL0

 足を痛めるような走り方を直していこう。これで学んだだろう、もっと速くなれるよ。がんばろう。
 一度伸びたものはもとには戻らないと知っていた。その場で、部活を辞めることを顧問に告げた。

 少し経ったときに、親はわたしに「まだよかったじゃない」と言った。
以下略 AAS



21:名無しNIPPER[saga]
2020/02/09(日) 02:32:48.36 ID:QhrXPTvL0

「となり、いい?」

 ベランダの手すりに顎を乗せてうとうとしていると、放課後に似合わない制服姿の彼女がそう声をかけてきた。
 なんで違う教室の、と思って固まる。すると、彼女はうんうん唸って目の前に何かを差し出してくる。
以下略 AAS



22:名無しNIPPER[saga]
2020/02/09(日) 02:33:29.09 ID:QhrXPTvL0

 ……ていうかあれ、引退したからって言ってなかったかさっき。
 それって、まさか。まさかのまさかなのか。去年より絶対速いのに?

「負けたの?」
以下略 AAS



23:名無しNIPPER[saga]
2020/02/09(日) 02:34:04.33 ID:QhrXPTvL0

「あなたってどこの大学受けるの?」

 質問に質問が返ってくる。
 ええなにそのしつもん……と思いつつも返答する。近所の大学。
以下略 AAS



24:名無しNIPPER[saga]
2020/02/09(日) 02:34:45.86 ID:QhrXPTvL0

「ねえ、これから時間ある?」

 腕時計を指差して、彼女は穏やかに首を傾げる。
 反応にひどく困る。暇は暇だけど。
以下略 AAS



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