スタートダッシュ
1- 20
20:名無しNIPPER[saga]
2020/02/09(日) 02:32:11.26 ID:QhrXPTvL0

 足を痛めるような走り方を直していこう。これで学んだだろう、もっと速くなれるよ。がんばろう。
 一度伸びたものはもとには戻らないと知っていた。その場で、部活を辞めることを顧問に告げた。

 少し経ったときに、親はわたしに「まだよかったじゃない」と言った。
 その意味は続きや真意を聞かずとも分かっていた。わたしは怒りとかそういう感情も湧かずにただただ呆れた。
 ご機嫌取りか何なのか、わたしを元気づけようと一方的に考えたのか、親はわたしをいろいろなところに連れて行こうとした。

 壊れたおもちゃは継ぎ接ぎしたって意味ないのに。
 一度強く拒否すると、その後にそういう話をしてくることはなかった。
 わたしは完全な自由を手に入れ、親は大好きな走ることを失った可哀想な娘を手に入れた。
 本質的には何も変わってない気がした。でも、わたしはそれで良かった。続くことがもう耐えきれなかったのだと思う。

 走ることから遠ざかったけれど、わたしはそのことを欠落だとは思わなかった。
 結局のところ、わたしにとっての走ることは習慣であって呼吸ではなかった。ないならないでなんとかなるものだった。

 数ヶ月後に、走っている彼女を遠くから見て、その走り方の綺麗さに目を奪われた。
 もともとそうだとは思っていたけど、離れてみると思っていた以上で、近くにいたら恐らく一生気付けなかったことだった。

 彼女をいつも目で追ってしまう自分がいた。
 何となく家に居づらくて、放課後に教室に残っていたことがそれを加速させた。
 わたしの中で彼女の占める割合が大きくなっていった。
 時間が経って治っても前までのようなスタートが切れるわけがなかった。嘘でしょ、と思ったけれどそれが現実だった。





<<前のレス[*]次のレス[#]>>
26Res/28.62 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice