19:名無しNIPPER[saga]
2020/02/09(日) 02:31:19.54 ID:QhrXPTvL0
もっともらしい理由が一つでもあれば、多少は自分を偽ったりもできるのだろうと思う。
そうすることが選べてそうするのと、そうせざるを得ないからそうするとではまるっきり違う。
自分のことは自分が一番に分かっていて、だからこそ周囲には隠して、がんばって取り繕おうとしていた部分もあった。大抵わたしが我慢したり黙っていれば済むことなのだから、わざわざ他者の手を煩わせるわけにはいかない。自分のことには自分で責任を負いたい。この程度のことなのだから。
でも、わたしはあのときたしかに、彼女の思いに応えようと思った。考える間もなく、ほぼ一瞬で。
スピードを落とさずに走っていた。それで、先の二つはなんとかなった。違和感はほとんどなくて、なんだもう大丈夫だろうと思っていた。
だからその日だって、彼女の望み通りスピードを落とさずに走ろうとした。
ここに照準を合わせてきてるのだろうと、なんとなく感じていたから。
中盤に至るまでのリードはほんの少し、自分も彼女もいつもより調子が良いと思った。
ぐいぐい追いついてくる彼女を終盤にかけて引き離そうとしたときに、かかとにスタートでかけるのと同じくらいの力をかけて。
それで、それで──。
──ブチッと、まあ、あっけなく切れてしまった。
フィニッシュ後に、身体を支えきれなくなって倒れ込んだ。
どっちが速かったんだっけ、多分わたしの方が速かった。どうして最後まで走れたんだろう。
すぐに顧問と病院に行って、どうせそうだろうと思っていた診断をされた。
また走れるようになるさ、と顧問は言った。そのときの時点でもう走る気はなかった。
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