芹沢あさひ「この雨がいつか止んだなら」
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76: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:46:57.23 ID:hoMUvMIQo

 実はこういう話がある。
 ……何すか、これ?
 以前に言っていた次の仕事の企画書を起こしたもの。
 あの話っすか。無事に通ったんすね。
以下略 AAS



77: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:47:47.01 ID:hoMUvMIQo

 ん。でも、どうしてそんな話になったんすか? 他のみんなは普通に作詞家の人に書いてもらってるっすよね?
 ああ、そうだね。それについては別の人が担当していたりするから何とも言えないけれど、今回の一件に関して言えば、個人的な希望だ。
 プロデューサーさんの?
 そう。個人的に読んでみたかったから、こうしてお願いしているというわけ。
以下略 AAS



78: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:48:14.69 ID:hoMUvMIQo

 ……。
 どうしたの?
 あっ、いや、プロデューサーさんもわたしと同じ気持ちなんだなあ、と思って、それが、少しだけ……。珍しいじゃないっすか、プロデューサーさんがそんなこと言うの。
 珍しい? そうかな。割と頻繁に言っている気もするけれど、まあ、あさひがそう言うのならそうなんだろうね。
以下略 AAS



79: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:48:45.20 ID:hoMUvMIQo

 わたしの詞が最後まで書きあがったら、最初にそれを読むのはプロデューサーさんってことになるんすか?
 そうなるだろうね。あさひが他の誰かに先に見せない限り。
 誰にも見せないっすよ! プロデューサーさんが、えっと、わたしを信じて? こうして持ってきてくれた仕事っすから、最後までちゃんとやりきってみせるっす! これは本当っす!
 うん。あさひの言葉が届く日を楽しみしているよ。これも本当だ。
以下略 AAS



80: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:49:36.90 ID:hoMUvMIQo

  *

 それから、どれくらいの時間が経過しただろう。
 二〇分ほどか、もっと長くか、あるいは短くか、何の意味もなしに、ただ茫然と私はその場に立ち尽くしていた。
以下略 AAS



81: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:50:14.58 ID:hoMUvMIQo

 ここへ来れば何かが変わるだろうかと思って、でもそれはあり得ないということもやはりどこかでは解っていた。
 それでも私はここまでやってきて、その想像がただの想像でしかなかったということをわざわざ証明したのだった。

 ずっと言葉を探していた。本当のことは何もみつけられなかった。
以下略 AAS



82: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:51:08.18 ID:hoMUvMIQo

「――あさひっ!」

 突如、私の名前を叫ぶ声とともに上半身を激しい揺れが伝った。

以下略 AAS



83: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:51:41.18 ID:hoMUvMIQo

 すぐに考えた。いまこの場で何が起こっているのか。それは想像に難くない。

 彼はあらかじめ宣言していた通り、ある程度したら車を出てこちらに来るつもりだったのだろう。
 でも、それよりも先に、あるいは車を出てしばらくしたところかもしれないが、さきほど止んだはずの雨がまた降り始めたことに気がついた。
以下略 AAS



84: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:52:11.53 ID:hoMUvMIQo

「じゃないっすか、じゃあないだろ。ほら」

 彼は呼吸を整えようともせずに、左手を差し出した。
 私はそれを受け取って、酷く濡れている髪の上にとりあえず乗せる。
以下略 AAS



85: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:52:37.16 ID:hoMUvMIQo

 もう一度振り返って、私の視界は再びそれを捉える。

 ――ここにあるのは、だから、たったこれだけだ。

以下略 AAS



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