81: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:50:14.58 ID:hoMUvMIQo
ここへ来れば何かが変わるだろうかと思って、でもそれはあり得ないということもやはりどこかでは解っていた。
それでも私はここまでやってきて、その想像がただの想像でしかなかったということをわざわざ証明したのだった。
ずっと言葉を探していた。本当のことは何もみつけられなかった。
だけど、それはきっと当たり前のことなんだと思う。
だって、それを伝えるべき相手がもうどこにもいないのだから、いまさら他の何かに手が届くことなんて、気づくことさえあるはずがない。
本当のことなんて、もしかしたらそのくらいのものなのかもしれない。
灰色の空から一滴の雫、たったそれだけのことで世界はいとも容易く呼吸を取り返す。
海の底みたいに濁ったざわめきが、辺りの暗がりを埋め尽くしていく。
それでも動けずにいたのは、あの日だって、いまだって、きっと私一人だけだった。
耳鳴りがする。
153Res/110.09 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20