44: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:26:28.50 ID:hoMUvMIQo
*
プロデューサーさん、何やってるんすか?
これ? 次の仕事に向けて企画書を書いているんだ。
45: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:27:08.15 ID:hoMUvMIQo
被験者にこう尋ねる。――片方はブーバ、もう片方はキキという名前です。貴方はどちらがブーバでどちらがキキだと思いますか? ってね。あさひはどう思う?
トゲトゲとぐにゃぐにゃっすよね。うーん。それならトゲトゲのほうがキキっぽくないっすか? 理由は、うまく説明できないっすけど。
そうだね。実際、むかしの心理学者が実験してみたところ、あさひと同じように答えた人が全体のほとんどを占めたらしい。
へえー! 面白いっすね!
46: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:27:53.30 ID:hoMUvMIQo
ああ、訊かれるだろうなとは思っていたけれど、残念ながらいまは教えられない。
えー! なんでっすか!
まだ正式には決まっていないからね。これはあくまで案の段階なんだ。もしかしたら没になるかもしれないし、なのに憶測の噂だけが飛び交っても困るでしょう。
誰にも言わないっすから!
47: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:28:25.55 ID:hoMUvMIQo
*
私が目を覚ましたとき、車のエンジン音は完全に止んでいて、雨粒の跳ねる音だけが相も変わらずに空気を劈いていた。
48: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:28:52.67 ID:hoMUvMIQo
「おはよう」
すぐ隣からプロデューサーさんの声がした。私は目を擦りながら応える。
49: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:29:49.56 ID:hoMUvMIQo
運転席に腰かけたプロデューサーさんはなにやら携帯端末を操作していた。
指先は忙しなく液晶を叩いている。
はづきさん辺りに連絡を回しているのかもしれない。
50: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:30:16.32 ID:hoMUvMIQo
「なるほど」
私は頷いた。それはどちらかといえば感嘆に近かった。
51: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:30:44.29 ID:hoMUvMIQo
「らしくないよな。花なんて」
彼がいつも通りの様子で笑う。
その言葉の意味が私にはうまく掴めなくて、だから私は何も答えずに黙っていた。
52: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:31:40.09 ID:hoMUvMIQo
両腕に残った痺れを振り払うように、自分の頬をぺちと叩く。
話しているうちに目が冴えてきた。
できれば一度思いきり身体を伸ばしたかったけれど、狭い助手席の上じゃどうしようもない。
53: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:32:08.52 ID:hoMUvMIQo
ハンドル脇に差し込まれていた鍵を、彼の右手がぐいと回す。
すると、いったいどういう構造になっているのだろう、まるで息を吹き返したように唸り声をあげたエンジンの振動が、車体を大きく揺らし始めた。
車体が身体、エンジンが心臓。だったらこの揺れは鼓動そのものだ。
54: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:32:34.64 ID:hoMUvMIQo
彼曰く、あと数分ほどで目的地に到着するらしい。
実際、カーナビが示す目的地までの直線距離も、もうほとんどわずかだった。
向こうに着いたとき、はじめに掛ける言葉はいったい何がいいだろうかと考える。
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