芹沢あさひ「この雨がいつか止んだなら」
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53: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:32:08.52 ID:hoMUvMIQo

 ハンドル脇に差し込まれていた鍵を、彼の右手がぐいと回す。
 すると、いったいどういう構造になっているのだろう、まるで息を吹き返したように唸り声をあげたエンジンの振動が、車体を大きく揺らし始めた。

 車体が身体、エンジンが心臓。だったらこの揺れは鼓動そのものだ。
 ならば、タンクいっぱいに溜められたガソリンは血液、いや、燃やして走るのだから酸素のほうがイメージは近いのかもしれない。
 この場合、そもそもの起動に使った鍵はいったい何に置き換えることができるだろう?
 絶え間なく続く心拍を自由自在に扱う機能なんて、私たち人間には備わっていない。
 止まってしまったときが最初で最後だ。

「じゃ、出すぞ」

 プロデューサーさんが言った。
 私は考えるのを一旦やめて、シートベルトがついたままになっていることを確認する。
 それから彼にも見えるよう首を振った。




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