芹沢あさひ「この雨がいつか止んだなら」
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54: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:32:34.64 ID:hoMUvMIQo

 彼曰く、あと数分ほどで目的地に到着するらしい。
 実際、カーナビが示す目的地までの直線距離も、もうほとんどわずかだった。

 向こうに着いたとき、はじめに掛ける言葉はいったい何がいいだろうかと考える。

 そんなものは多分、何だっていいのだろう。
 その瞬間に相応しい言葉なんて、きっとどれだけ考えたところで見つからない。
 だから私は、途中からはずっと遠くの空を眺めていた。

 おあつらえ向けの雨だなんて、口を衝いて零れ落ちた言葉のことを思い出す。
 でも、私はこの雨が止むことを心のどこかで願う自分の存在に気がついていた。
 傘を持っていないからじゃない。それはむしろ逆だ。
 たとえ雨が降るとしたって、それでもいつかは止んでほしかったから、だから私は傘を持ってこなかった。




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