5: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 00:18:36.18 ID:nY0iWbpOO
「12月15日、朝のニュースです。世界レベルのアイドルヘレンさんが今日未明アトランティスを発見し」
いつものようにコーヒーを飲みながら朝のニュースを見る。存在自体が神話レベルであった超古代文明アトランティスの存在を証明する遺跡を見つけた! とヘレンさんがインタビューを受けている。最近あの人見ないなとは思っていたが、まさかアトランティスを発見していたとは。文字通り歴史に名を刻むとは流石だ。
「しまった、帰りに卵買わなきゃいけないな」
6: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 00:19:20.14 ID:nY0iWbpOO
「毎日の日課ですからっ。あ、でも今日は私だけじゃないんですよ?」
「ん?」
悠貴は後ろを振り向く。少し遅れてやや眠そうに走ってくる美穂がやってきた。
7: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 00:20:33.52 ID:nY0iWbpOO
「はい、そこまで! 各自明日に向けて無理する事がないように!」
「ふぅ……」
「はい、お疲れ様」
8: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 00:21:35.63 ID:nY0iWbpOO
18歳までのカウントダウンが残り12時間を切った彼女は少し不安そうに答える。小日向美穂という女の子の最大の個性ははにかみ屋というところだ。
恥ずかしがり屋で緊張しいだけど、かといって内気な女の子かと聞かれるとそんなことはない。むしろ熊本の女は強い、という自己暗示にも似た矜持を持っているくらいだ。
「今の君は緊張すらも楽しめる。違うかな?」
9: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 00:22:51.37 ID:nY0iWbpOO
「昨日まで、ううん。ほんの少し前までの美穂を信じてあげて。そうすれば自信が生まれないかな?」
「はい、なんだか気持ちが楽になった気がします。そうですよね、これまでの私を信じてあげなきゃですもんね」
「それは良かった」
10: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 00:23:56.50 ID:nY0iWbpOO
「私は……ちょっとだけ、期待していることがあるんです」
「うん?」
「昔の話なんですけどね。おばあちゃんの家に遊びにいった時、話してもらったんです。18歳になったおばあちゃんが体験した、不思議なお話ーー。その物語には少し年上の男の人と女の人が出てくるんですけど……摩訶不思議で愉快なお話だってんです。だから私にも、不思議な出来事が起きないかなって。ちょっぴり、期待してます」
11: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 00:24:35.87 ID:nY0iWbpOO
「うー、寒い」
「今日は今年一番の寒さって言われてるしな。よくジョギングしたもんだ」
スタジオから出た加蓮はさっきから寒い寒いと同じワードを繰り返している。寒いと言っても暖かくなるわけでも夏が来るわけでもないので手のひらサイズの幸せをお裾分けしてやる。
12: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 00:25:26.98 ID:nY0iWbpOO
インフルエンザと言っても1週間あれば熱は下がるだろうが、先輩は相当うなされていたらしく丸々2週間熱が下がらず寝込んでいたそうだ。当然その間事務所に来ることはできないし、年末年始の撮影も控えているアイドルに移そうものなら洒落にならないことになる。その間彼が担当していたアイドルを同僚のみんなで分担して面倒見ることになっていた。俺が加蓮の送り迎えをしているのもそういう事情があったのだ。
「それより明日だよ? 美穂へのプレゼント、決めた?」
「あー、まぁ、うん」
13: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 00:27:13.22 ID:nY0iWbpOO
「なぁ加蓮?」
「んー?」
「これ、違うんじゃないか?」
14: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 00:28:03.44 ID:nY0iWbpOO
「それともの使い方を間違えてるぞ。それはそうと聞きたいのだけど、なんで俺が荷物持ちしてるの?」
一方で俺の両手には彼女の買った買い物袋が増えてゆく。その姿はクリスマス前にプレゼントをかき集めるサンタクロースにも見えただろう。いや、むしろ忖度苦労すというべきか。美穂の誕生日プレゼントを買いに来たはずなのにあれれおかしいぞぉ。ひょっとしたらこの子先輩にも荷物持ちさせてるのか。周囲の視線がやや気になるが帽子と眼鏡とマスクで変装している加蓮には気付いていないようだ。目元と口元を隠せば案外隠し通せるものだったりする。
「仕方ないよ、私マイクより重いもの持てないから」
15: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 00:29:00.45 ID:nY0iWbpOO
「ふんふんふーん」
ショッピングを心ゆくまで楽しんだ加蓮は満足げにフライドポテトを頬張る。片手にポテト、もう片方の手には参考書を持って。
「テスト勉強?」
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