【たぬき】高垣楓「迷子のクロと歌わないカナリヤのビート」
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267: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/09/03(火) 01:20:25.23 ID:/BT2JQWN0

「……いいのね?」
「はい。自分で決めたことですから」

 誰に許されなくとも、何に背こうとも。自分自身の弱い心にだって例外じゃない。
以下略 AAS



268: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/09/03(火) 01:21:18.01 ID:/BT2JQWN0

「いえ。……というより……」

 返事は、驚くほどスルッと出た。
 脳裏に思い浮かぶのは、今もきっと盛り上がっているであろう年越しライブの様子だ。
以下略 AAS



269: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/09/03(火) 01:22:48.19 ID:/BT2JQWN0

 父親の進退やアイドル業界の裏事情や、勝つか負けるかなんてこと、本当はどうだって良かった。

 きらきら輝くあの人たちは、一体どこへ行ってしまったんだろう。
 泣いてはいないか。寒くないだろうか。寂しい思いをしてはいないだろうか。
以下略 AAS



270: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/09/03(火) 01:24:13.64 ID:/BT2JQWN0

「……ありがとうございます。気が楽になりました」
「行くのね?」
「はい」

以下略 AAS



271: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/09/03(火) 01:25:32.19 ID:/BT2JQWN0
 
 マスターは少し考えた。
 やがて傘を閉じ、風に舞う花吹雪に総身を晒す。

「――今からこの傘を倒すわ。倒れた方角が、あなたの向かう先」
以下略 AAS



272: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/09/03(火) 01:26:31.99 ID:/BT2JQWN0

「ありがとうございます!」

 礼を告げ、一散に走る。
 さっきよりもずっと足が軽い。傘が示す方向へ、一ミリもぶれずに走り抜けられる自信がある。
以下略 AAS



273: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/09/03(火) 01:28:35.71 ID:/BT2JQWN0




「がんばってね、P君」
以下略 AAS



274: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/09/03(火) 01:29:44.71 ID:/BT2JQWN0

 どうして今まで気付かなかったんだ。

 忘れていない筈じゃないか。親父に連れられて見せてくれた、あのはにかんだ顔を。
 今にして思えばどうして会わせてくれたのか。
以下略 AAS



275: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/09/03(火) 01:31:17.55 ID:/BT2JQWN0

「振り向かないで。待たせてる人がいるでしょう?」

「瞳子ちゃん……! お、おれ、今まで……っ」

以下略 AAS



276: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/09/03(火) 01:31:49.14 ID:/BT2JQWN0

 踵を返す。もう振り返らない。
 代わり映えのしない吹雪の中に、はっきりと一筋の道が見えた気がした。

 それがどこに繋がるとしても、果てにはきっと、目指すものがあると信じた。
以下略 AAS



277: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/09/03(火) 01:33:00.33 ID:/BT2JQWN0

  ◆◆◆◆


 身を切るような北風と、雪と、光に浮かされた明るい闇の中にいた。
以下略 AAS



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