【たぬき】高垣楓「迷子のクロと歌わないカナリヤのビート」
1- 20
268: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/09/03(火) 01:21:18.01 ID:/BT2JQWN0

「いえ。……というより……」

 返事は、驚くほどスルッと出た。
 脳裏に思い浮かぶのは、今もきっと盛り上がっているであろう年越しライブの様子だ。

 あのステージを思い出すと心が躍る。
 ……とても懐かしい色の光だった。


「最初から、嫌いなんかじゃなかったんです」


「なら、どうして?」
「面白い話じゃありませんよ」
「そんなことないわ。聞かせて」

 自戒。
 あるいは、遠い日の回顧。

「……俺は、アイドルが好きでした。みんなキラキラしていて、見ているだけで楽しくて。けど……楽しいだけじゃないんだって、知ってしまって」

 憧れだった。
 プロデューサーの父親は、誇りでさえあった。
 あの頃は、いつか訪れる現実の流れになど気付きすらしなくて。

「……寂しかったんです。なんか……十年前から、取り残されちゃったみたいで」
「あなたは、ずっとそう思ってたの?」
「いや……ちょっと、違う。違うんだ。俺だけじゃない。俺よりも、もっとずっと辛い思いをした人達が……」




<<前のレス[*]次のレス[#]>>
328Res/204.86 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice