【たぬき】高垣楓「迷子のクロと歌わないカナリヤのビート」
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271: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/09/03(火) 01:25:32.19 ID:/BT2JQWN0
 
 マスターは少し考えた。
 やがて傘を閉じ、風に舞う花吹雪に総身を晒す。

「――今からこの傘を倒すわ。倒れた方角が、あなたの向かう先」

 そうきたか。
 立てられた傘は、運命を決めるにはいかにも頼りなく思える。

「私自身は選ばない。あなたにも決められない。いわば運みたいなもので決めるの。……それでもいい?」

 すぐさま頷き返す。
 それじゃあ――と、軽い合図と共に、傘がマスターの手を離れる。

 細い傘は風に煽られ、ゆらり、ふらり、と頼りなく揺れて……
 ちょっとびっくりするほどの間を置き、倒れた。

 俺から見て、右斜め後ろの方角。




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