【ミリマス】馬場このみ『衣手にふる』
1- 20
309: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/12(金) 01:28:52.83 ID:Bg3Eqo0s0

すぐ後に別の曲を控えている風花と別れて、このみは桃子と二人で椅子に座った。
多くのステージライトに照らされ熱を持つステージの上とは対照的で、この辺りはひんやりとしていた。
ペットボトルの水を飲んで、そっと呼吸を整えた。
このみが深呼吸をする度に、目の中にステージから見えた景色が浮かんだ。
以下略 AAS



310: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/12(金) 01:29:27.16 ID:Bg3Eqo0s0

このみが気づくと、あれほど鳴っていた胸の鼓動ももう収まっていた。
このみが桃子を見ると、やはり目が合って、それがおかしくて二人で笑った。

「桃子ちゃん。一緒に歌ってくれて、ありがとう。」
以下略 AAS



311: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/12(金) 01:29:54.04 ID:Bg3Eqo0s0

このみの言葉を聞いて、桃子は照れくさそうにしながら、それを隠すみたいにタオルで頬の汗を拭いた。

「桃子も、このみさんと歌えて楽しかったよ。……これからもまた、沢山歌いたいな。」

以下略 AAS



312: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/12(金) 01:30:28.22 ID:Bg3Eqo0s0

このみは、プロデューサーと共に、上手側の舞台袖に居た。
この場所からは、袖幕の向こう側に、ステージがよく見えた。
隣に居た彼が、このみの手を握って、そっとあるものを手渡した。
それは、一つのブローチだった。
以下略 AAS



313: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/12(金) 01:31:17.95 ID:Bg3Eqo0s0

手で陰を作ると、その玉はもとの色を取りもどした。
それは、何色にも染まっていない、どこまでも透明なガラス玉だった。
それから、このみはその何の変哲もないガラス玉にそっと指先で触れた。
指先の感覚は今までと変わらず同じままで、ただ愛おしかった。
以下略 AAS



314: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/12(金) 01:31:45.42 ID:Bg3Eqo0s0
「このみさん。ブローチを着けてみてくれますか?」

ブローチは、衣装に穴が開いたりしないように、クリップで着けられるようになっている。
このみは左胸に手をやって、衣装の生地の境目にある隙間に、そっと留めた。

以下略 AAS



315: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/12(金) 01:32:11.65 ID:Bg3Eqo0s0

次のこのみの出番が、近づいていた。
このみは、また後でね、と彼に手を振って、待機場所へと向かった。

待機場所は、下手側と同じように、衝立と幕で簡単に区切られていて、長机と椅子が所狭しと並んでいた。
以下略 AAS



316: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/12(金) 01:32:42.91 ID:Bg3Eqo0s0

辺りが暗転するとともに、このみはステージへと飛び出していった。
客席には、前の曲の余韻が残っていて、青いサイリウムの色が海みたいにきれいだった。

このみは、ステージの真ん中で足を止めた。
以下略 AAS



317: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/12(金) 01:33:22.69 ID:Bg3Eqo0s0

『ねぇ、甘えてみてもいい?
 この恋が本当だと伝えてみたいの』

たくさんの温かなステージライトが、このみを照らした。
以下略 AAS



318: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/12(金) 01:34:07.78 ID:Bg3Eqo0s0

初めて触れたあの日から、冬を超えて、季節はまた一つ巡っていく。
袖に降り積もった雪はいつしか融けて、その雫はやがて、温かなこの場所で、ひとつの蕾となった。
『いつの日か、花芽吹く春の日を、待っている』
──春の足音が、聞こえた気がした。
以下略 AAS



321Res/210.41 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice