314: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/12(金) 01:31:45.42 ID:Bg3Eqo0s0
「このみさん。ブローチを着けてみてくれますか?」
ブローチは、衣装に穴が開いたりしないように、クリップで着けられるようになっている。
このみは左胸に手をやって、衣装の生地の境目にある隙間に、そっと留めた。
「どうかしら?」
このみは、腕を後ろに回して、そう言った。
彼はこのみをじいっと見た。
それから、彼は優しい目をして、そっと微笑んだ。
「やっぱり、このみさんは素敵ですね。……ほら、見てください。」
彼は、すぐ近くの机の上にあった鏡を示した。
どういう意味だろうとこのみは思いつつも、彼に促されて鏡を覗き込んだ。
そこには、胸を張った自分が映っていた。
左胸に着けたブローチが、まるで勲章みたいにきらりと光った。
叶えたい願いに向かって、ここまで一歩ずつでも前へと進んできた。
そんな自分が誇らしく思えた。
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