【ミリマス】馬場このみ『衣手にふる』
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306: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/12(金) 01:27:09.99 ID:Bg3Eqo0s0

朝方の厳しかった冷え込みもいつしか緩やかになっていて、また一つ季節がめぐり始めた。
三月の半ばの、とある日曜日。
今日の日もまた、光と音が劇場中に響き渡っていた。
観客席に居る、多くの劇場のファンたちが、光り輝くアイドルたちのステージを目撃していた。
以下略 AAS



307: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/12(金) 01:27:40.07 ID:Bg3Eqo0s0

この日は、このみの復帰後初めての公演だった。
久々に腕を通したステージ衣装だったが、不思議と体に馴染んで、心が躍ったのがこのみ自身にもよくわかった。
『ピーチフルール』という名前の付いたこの衣装は、桃色が基調となったドレス調のステージ衣装だ。
このみがアイドル活動にようやく慣れてきたという頃に出逢った、初めての自分だけの衣装だった。
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308: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/12(金) 01:28:26.94 ID:Bg3Eqo0s0

公演は、もう中盤に差し掛かっていた。
このみは、『永遠の花』のステージを終えて、風花と桃子の二人と共に舞台袖に戻ってきていた。
このみたち三人は、武道館公演の以後も、ユニット『ジェミニ』として時折この曲を歌ってきた。

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309: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/12(金) 01:28:52.83 ID:Bg3Eqo0s0

すぐ後に別の曲を控えている風花と別れて、このみは桃子と二人で椅子に座った。
多くのステージライトに照らされ熱を持つステージの上とは対照的で、この辺りはひんやりとしていた。
ペットボトルの水を飲んで、そっと呼吸を整えた。
このみが深呼吸をする度に、目の中にステージから見えた景色が浮かんだ。
以下略 AAS



310: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/12(金) 01:29:27.16 ID:Bg3Eqo0s0

このみが気づくと、あれほど鳴っていた胸の鼓動ももう収まっていた。
このみが桃子を見ると、やはり目が合って、それがおかしくて二人で笑った。

「桃子ちゃん。一緒に歌ってくれて、ありがとう。」
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311: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/12(金) 01:29:54.04 ID:Bg3Eqo0s0

このみの言葉を聞いて、桃子は照れくさそうにしながら、それを隠すみたいにタオルで頬の汗を拭いた。

「桃子も、このみさんと歌えて楽しかったよ。……これからもまた、沢山歌いたいな。」

以下略 AAS



312: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/12(金) 01:30:28.22 ID:Bg3Eqo0s0

このみは、プロデューサーと共に、上手側の舞台袖に居た。
この場所からは、袖幕の向こう側に、ステージがよく見えた。
隣に居た彼が、このみの手を握って、そっとあるものを手渡した。
それは、一つのブローチだった。
以下略 AAS



313: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/12(金) 01:31:17.95 ID:Bg3Eqo0s0

手で陰を作ると、その玉はもとの色を取りもどした。
それは、何色にも染まっていない、どこまでも透明なガラス玉だった。
それから、このみはその何の変哲もないガラス玉にそっと指先で触れた。
指先の感覚は今までと変わらず同じままで、ただ愛おしかった。
以下略 AAS



314: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/12(金) 01:31:45.42 ID:Bg3Eqo0s0
「このみさん。ブローチを着けてみてくれますか?」

ブローチは、衣装に穴が開いたりしないように、クリップで着けられるようになっている。
このみは左胸に手をやって、衣装の生地の境目にある隙間に、そっと留めた。

以下略 AAS



315: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/12(金) 01:32:11.65 ID:Bg3Eqo0s0

次のこのみの出番が、近づいていた。
このみは、また後でね、と彼に手を振って、待機場所へと向かった。

待機場所は、下手側と同じように、衝立と幕で簡単に区切られていて、長机と椅子が所狭しと並んでいた。
以下略 AAS



316: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/12(金) 01:32:42.91 ID:Bg3Eqo0s0

辺りが暗転するとともに、このみはステージへと飛び出していった。
客席には、前の曲の余韻が残っていて、青いサイリウムの色が海みたいにきれいだった。

このみは、ステージの真ん中で足を止めた。
以下略 AAS



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