【ミリマス】馬場このみ『衣手にふる』
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191: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 22:12:50.31 ID:9DhA16vx0

「──でも、いいの。」

アイドルを辞めた先を想像出来ないのは、
きっと『アイドル』として叶えたい夢が目の前にあるからなんだ、とこのみは思った。
以下略 AAS



192: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 22:13:55.06 ID:9DhA16vx0

息を吐いてから、このみはゆっくりと口を開いた。

「やっぱり、ファンのみんなに会えなくなっちゃう、っていうのは寂しいけど……。」

以下略 AAS



193: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 22:14:26.48 ID:9DhA16vx0

だからこのみは、笑ってこう言った。

「プロデューサー。けど、心配しないでね。
 この演劇のお仕事は、私が自分でやると決めたことだから。
以下略 AAS



194: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 22:15:39.55 ID:9DhA16vx0

彼は、少しだけ逡巡した様子だった。
深く息をしてから、彼はつぶやくように言った。

「……やっぱりファン側も、寂しいんです。このみさんと会えなくなるのは。」
以下略 AAS



195: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 22:16:08.52 ID:9DhA16vx0

「……でも。」

張りつめそうになった空気のなか、彼はそう言った。
その声を聞いて、このみは顔を上げた。
以下略 AAS



196: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 22:16:35.16 ID:9DhA16vx0

このみはもう、彼のその言葉の先に何があるかを知っていた。
逸る気持ちに胸が高鳴ることを自覚しながら、このみは彼を見て、確かめるように呟いた。

「そ、それって……。」
以下略 AAS



197: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 22:17:44.90 ID:9DhA16vx0

「例え大切な人と会えない日が続いても、
 次会える日まであと何日だろう、って数えてみたり、
 どういう服を着ていこうかな、って考えてみたりするのも楽しくて。
 しばらく会えなかったとしても、その会えなかった日の分だけ、会えたときにほっとして嬉しくなる。
以下略 AAS



198: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 22:18:21.38 ID:9DhA16vx0

このみには、あの心地良い歓声が聞こえてくるようだった。
気が付けば劇場のみんなと舞台の上に立っていて、大勢の観客たちの前で歌を歌っていた。
ふと前を見れば、色とりどりの光の向こう側に、特別な人たちがいた。
一人、また一人と、ステージからの光に照らされるようにして、大切な人たちの顔が見えた。
以下略 AAS



199: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 22:19:11.33 ID:9DhA16vx0

胸の中にずっとしまい込んでいたものがあった。
本当はそう信じていたかった。
でも、もし違ったら。そうでなかったのなら。
……傷つくのが怖くて、ずっと見て見ぬふりをしてきたのかもしれない。
以下略 AAS



200: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 22:19:59.87 ID:9DhA16vx0

劇場のステージで、大切な人たちへ想いを届けようとしたはずなのに、いつだってそれよりもっと大きなものを貰っていた。
私は、自分の気持ちをいつも伝えられずにいて、受け取ってばかりだ、と。ずっと、そう思っていた。
だけど、今はもう分かる。
私がずっと伝えたかった想いは、きちんと私の大切な人たちに届いていたんだ。
以下略 AAS



201: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 22:20:38.26 ID:9DhA16vx0

声を詰まらせながら、このみは自問するようにそう呟いた。
ただ、このみはその答えが何であるかを既に知っていた。
知っていたから、涙が溢れて止まらなかった。

以下略 AAS



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