176:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:51:52.24 ID:YWfCY9A20
なんだろうな。あなたに伝えたいこと、伝えなきゃいけないことがいっぱいあると思って書き始めたけど、こうしてるとなかなか言葉が見つからない。
きっと顔を合わせて話すことがあれば、言いたいことも言わなくちゃいけないことも次から次に浮かんでくるんだろうな。
177:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:52:51.63 ID:YWfCY9A20
今でもたまに、沙綾はその手紙を読み返すことがある。
季節は冬。十二月の半ば過ぎ。もう今年も終わろうかという、寒い時期だった。
178:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:53:52.87 ID:YWfCY9A20
「沙綾ちゃん? どうかしたの?」
と、声をかけられて、沙綾は今まで頭の中に思い浮かべていたことを意識の隅に追いやった。
179:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:54:42.37 ID:YWfCY9A20
「初めてのライブハウスがなんだー! ここからわたしたちの伝説が幕を上げる!!」
「……かすみん、流石にテンション上がりすぎ」
180:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:55:34.37 ID:YWfCY9A20
「あ! 前のバンド、終わったみたいだよ!」
香澄の明るい声が響く。それに釣られてステージへ目をやれば、観客席に頭を下げてから舞台袖に向かってくる四人組のガールズバンドの姿が見えた。
181:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:56:15.12 ID:YWfCY9A20
「さぁ、みんな! かけ声やろ!」
そんな中、香澄が声を上げて、スッと輪の中央に手を差し出した。
182:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:57:35.47 ID:YWfCY9A20
真紅の星を携えた香澄を先頭に、彼女たちは歩を進める。有咲、りみ、たえと続き、沙綾は一番最後にステージへ上がった。
真っ白なステージライト。それが眩しくて、熱い。ああ、ライブだ。ライブハウスでライブをやるんだ。
183:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:58:27.89 ID:YWfCY9A20
「それじゃあ早速なんですが、曲に行きたいと思います!」
溌溂とした声を響かせ続ける香澄。それに呼応するように歓声が上がる。
184:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:58:53.96 ID:YWfCY9A20
「1000回潤んだ空!」
185:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:59:44.59 ID:YWfCY9A20
――その声を合図に、一呼吸おいて、有咲のキーボードが静かな音を奏でる。その旋律に、香澄の歌声が乗る。みんなのコーラスが合わさる。サビに入ればりみの重低音が、たえのギターサウンドが入ってきて、最後に沙綾のドラムが重なる。
香澄たちのこれまでと、これからの歌。
186:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 13:00:34.81 ID:YWfCY9A20
香澄と沙綾の机。彼女たちの音楽(キズナ)の始まりがあった場所。そこには香澄の文字で、有咲の文字で、りみの文字で、たえの文字で……この歌が刻まれている。
その最後の最後には、香澄が指した“みんな色の奇跡”に違わず、可愛さの中に芯の強さを感じる文字で新しいキズナが書き足されていた。
189Res/213.78 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20