177:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:52:51.63 ID:YWfCY9A20
今でもたまに、沙綾はその手紙を読み返すことがある。
季節は冬。十二月の半ば過ぎ。もう今年も終わろうかという、寒い時期だった。
本当に非現実的な、フツーに考えたら有り得ない空想みたいなひと月半の日々。けれど、確かに入れ替わって、大切なことにもう一度気付けて、大事なものが増えた日々。
その日々を思い出すと、いつも沙綾は胸の内が温かくなる。
お互い本当に似た者同士で、似たようなことを似たようなやり方でそれぞれに残していった。
だけど、と沙綾は思う。
確かに私と沙綾ちゃんは同じ山吹沙綾で、似ているところが多くある。けど、あちらの沙綾ちゃんの方が、どことなくお母さんっぽい。それはあの夢の中で話したこともそうだし、手紙に残してあった言葉からもうかがえる。
だからかは分からないけれど、不意に寂しくなった時なんかに沙綾からの手紙を読むと、いつも気持ちがホッとして落ち着く。
友達相手に母性を感じるって……と、自分の行動に若干の違和感というか、変な気持ちを覚える沙綾だけど、りみやたえが自分の作ったパンを無心に頬張る可愛い姿を見ると、『まぁそれはそれでいいのかな』とも思ってしまう。
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