178:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:53:52.87 ID:YWfCY9A20
「沙綾ちゃん? どうかしたの?」
と、声をかけられて、沙綾は今まで頭の中に思い浮かべていたことを意識の隅に追いやった。
「ううん。なんでもないよ、香澄ちゃん」
そしてニコリと笑顔を浮かべて返事をする。それから周りを見渡せば、Poppin'Partyのみんなの顔が見える。
いま彼女たちがいるのは、都内のあるライブハウス。“ガールズバンドの聖地”と謳われる場所の、舞台袖だ。そこで輪になって向かい合っているところだった。ちらりとステージへ目をやると、自分たちの前の出番のバンドが最後の曲を演奏している。
「まったく、本番前に呆けないでよね」
沙綾に向けて、有咲が震えたか細い声で言う。
「そういうベンケー殿もおかしいぞ。ウチベン系女子になってるがな」
りみは関西弁と標準語が入り混じった変な声を出す。
「……やばいっす、初ライブハウスで緊張マックスっす……」
たえはぶるぶると震えていて、隣に立つ沙綾とりみの肩に時おり身体がぶつかる。
「もう、みんな! そんな緊張しないで!」
そんなみんなの顔を見て、香澄が輝かんばかりの弾ける笑顔で声を出す。楽屋入りからずっとランダムスターを装備していたからだろうか、それとも彼女の持つ天性のカリスマなんだろうか、今日はいつも以上にテンションが高い。
それに引っ張られるように、沙綾も声を出す。
「だね。待ちに待ったライブだもん、楽しまなくちゃ!」
「その通り! みんなで、キラキラして、ドキドキしてる夢を撃ち抜こうよ!」
香澄の弾んだ声が同調して、沙綾も笑顔になる。有咲も、りみも、たえも……まだちょっとぎこちないけど、ニコリと笑った。
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