9: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/03/10(日) 00:23:48.60 ID:mXNAEsvV0
「千早ちゃん……って、やっぱり凄いですね」
路上販売を始めて十数分、僕の隣では並べかけのCDを持った春香が固まっていた。
10: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/03/10(日) 00:25:37.69 ID:mXNAEsvV0
……逆に春香が歌う番になると、これが見事なまでに人の流れを留めることが出来なかった。
なぜなら彼女の歌唱力は、良くても一応聞けるかな? 程度の実に平凡レベルな代物であり、
むしろこれが本来の駆け出しアイドルの路上販売、その実態であると僕に見せつけているようでもあった。
11: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/03/10(日) 00:26:04.48 ID:mXNAEsvV0
とはいえ、応援しても二人の実力差は歴戦。
だが数時間後、「潮時だな」と撤収を決めた僕に喰ってかかったのは千早の方だ。
12: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/03/10(日) 00:27:41.87 ID:mXNAEsvV0
「ご覧、今の自分の顔を」
言われた彼女が押し黙る。
13: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/03/10(日) 00:28:57.53 ID:mXNAEsvV0
「今日、君は春香君に負けた。売り上げの数もそうであるし……
何よりも君は、自分に興味を持ってくれた相手に一度でも笑顔を見せてあげれたのかい?」
「それは……! それは、できてません……けど――」
14: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/03/10(日) 00:30:27.30 ID:mXNAEsvV0
「でも、そんなこと、言われたって……」
千早が自分の腕を抱く。
15: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/03/10(日) 00:31:17.02 ID:mXNAEsvV0
===
翌日、事務所で出会った千早は驚くべき変身を遂げていた。
髪はしっかり整えられ、眉も手入れをしたのかスッキリとし、
16: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/03/10(日) 00:32:28.18 ID:mXNAEsvV0
「おはよう千早君、見違えたな。春香君も協力ありがとう」
挨拶しながら近づくと、二人は同時に顔を上げた。
17: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/03/10(日) 00:33:21.10 ID:mXNAEsvV0
「それじゃあ次は、僕がプロデューサーらしい指導をしないとな」
言いながら僕は千早の前に鏡を置いた。
小さく手を叩いた後で、「はい、笑顔!」と声をかける。
18: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/03/10(日) 00:34:20.47 ID:mXNAEsvV0
「……不気味ですね」
彼女の自己評価は正しい。
19: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/03/10(日) 00:35:39.39 ID:mXNAEsvV0
だから、僕はこう返した。「なんだ、だったら大丈夫」と。
「忘れてる事なら思い出せる、知らないなら教わることもできる」
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