132:名無しNIPPER[saga]
2019/03/25(月) 04:56:16.93 ID:sLYD87sq0
愛栗子「別にそのような小物どもが何人束になってもわらわには関係のない話なのじゃがの〜」
『船周りの賊気にこれぽっちも興味なし』ということを示すかのように愛栗子は目を閉じたまま扇子を仰いだ。
そんな彼女の態度に少しばかり額にしわ寄せした月一、船の席を立ってもう一度口を開こうとしたところで乱怒攻流に袖を引かれる。
133:名無しNIPPER[saga]
2019/03/25(月) 04:57:32.50 ID:sLYD87sq0
月一「んぅ?」
袖を引いた乱怒攻流は手を顔前に立て三回ほど月一に振って見せた。
それを見た月一は愛栗子たる少女がどのような人物なのかということを半分ほど理解すると口先まで出ていた不満を一旦呑みこみ再び船に腰かけた。
134:名無しNIPPER[saga]
2019/03/25(月) 04:58:25.55 ID:sLYD87sq0
月一「はぁ……しかし、紺之介殿が別船で見回りをしているというのは果たして本当なのか? それらしき船は全く見えないが……」
改めて辺りを見回した月一は今一度疑いの表情を乱怒攻流に向ける。
その表情は彼女が最初に紺之介に向けていたものと全く同じ面であった。
135:名無しNIPPER[saga]
2019/03/25(月) 04:59:06.75 ID:sLYD87sq0
睨まれているとボロが出ると悟った乱怒攻流、とっさに愛栗子の方に顔を流して振る。
乱怒攻流「う、うん……まぁね〜……ね、愛栗子」
愛栗子「よいよい。今は全てあやつに任せておけばよいのじゃ」
136:名無しNIPPER[saga]
2019/03/25(月) 04:59:44.49 ID:sLYD87sq0
二人のやり取りを横目に乱怒攻流はひとまず胸を撫で下ろしていた。
実のところ紺之介は彼女らの船に同席しているのだが、彼の作戦の都合上そのことを華蓮らには伝えられないというのが現状であった。
137:名無しNIPPER[saga]
2019/03/25(月) 05:00:26.36 ID:sLYD87sq0
その安息もつかの間、乱怒攻流は微かな殺気を感じ取った。前方を見渡し耳を澄ませる。
そして拾う。
138:名無しNIPPER[saga]
2019/03/25(月) 05:00:58.46 ID:sLYD87sq0
揺れる水面の包囲網、彼らは彼女たちの乗った和船の航路を予測し先回りしていたのである。
気がつけば嗚呼無情。数多の小舟で彼女たちを囲んだ彼らは一斉にその中心部へと弓矢を構えた。
139:名無しNIPPER[saga]
2019/03/25(月) 05:02:12.52 ID:sLYD87sq0
愛栗子「いつの時代も海賊というのは変わらんものじゃのぅ……そろそろお伽話のような巨船一つで攻めてくる輩が現れたのかと少しばかり期待しておったのじゃが……」
囲まれても尚余裕を崩さぬ愛栗子に月一は焦り混じりの表情で叫んだ。
月一「紺之介殿は何をしておるのだ!? 私たちがこんな状況になっても何故姿を現さぬのだ!」
140:名無しNIPPER[saga]
2019/03/25(月) 05:03:02.25 ID:sLYD87sq0
愛栗子「乱、あの藍色の鞘をさげた奴が見えるか? おそらくあやつじゃな」
乱怒攻流「そうみたいね」
殺伐とした空気の中、二人が目をつけた大男が銛を掲げて名乗りを上げた。
141:名無しNIPPER[saga]
2019/03/25(月) 05:04:06.00 ID:sLYD87sq0
船長「見せしめだァ! そこの漕ぎ手を射てェ!」
漕ぎ手「ひィ!」
そして遂に漕ぎ手殺しの矢、放たれん。
142:名無しNIPPER[saga]
2019/03/25(月) 05:04:49.47 ID:sLYD87sq0
月一「なんなのだ……これは……」
愛栗子「乱、一思いに微塵にして海へ落としてやれ。このような輩でも魚の腹の足しくらいにはなるじゃろて」
乱怒攻流(あんたも戦いなさいよぉ!)
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