135: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/17(火) 23:06:19.90 ID:MeNYOwih0
「あぁ、どうも。すぐにわかりましたよ」
案内された部屋には会社の代表が待っていた。
Blu-rayのコメンタリーで耳にした声だ。
136: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/17(火) 23:08:11.96 ID:MeNYOwih0
やがてアンチョビが語り終えると、目の前の彼女の存在が信じられないのだろう、彼は頭を抱えて呟いた。
「これでも立ち上げの頃からガルパンには関わってるから、裏側は全部知ってるんだけどね」
「おーっ! それは助かる! ガルパンってどうやって生まれたんだっ!?」
137: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/17(火) 23:09:49.23 ID:MeNYOwih0
「……悪いけど、別世界からやってきたガルパンのキャラクターから着想を得たわけでもないし、画面の中からキャラクターが表れるなんて話聞いた覚えもない。期待には応えられないね」
アンチョビが息を詰まらせる。
目を僅かに大きくし、返す言葉が見つからないようだ。
138: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/17(火) 23:13:29.90 ID:MeNYOwih0
2017年12月14日。木曜日。
リリース日だ。
当然のようにシステムには未完成の機能が残っているが、そんなものは後から対応してどうにかすれば良いのだふはは。
139: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/17(火) 23:15:33.19 ID:MeNYOwih0
禅僧のような精神で黙々と取り組んでいると、14時を前にしてリーダーが「一旦チケット投げるのやめろ!」と叫んだ。
スタッフ全員の視線を集めると、リーダーは「おらおらいくぜえ!」と本番環境へのデータのアップロードを行う。
そうして目標としていたリリースは終わったわけだが、まだ出来ていない機能すらある状態だ。
作業をストップするわけにはいかない。
140: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/17(火) 23:18:10.62 ID:MeNYOwih0
2017年12月15日。金曜日。
だと思う。おそらく。
目覚めると、体が動かなかった。
141: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/17(火) 23:20:04.38 ID:MeNYOwih0
ひゅうひゅうと微かな呼吸が寝室に薄く響いた。
何とか気力を振り絞ると指先がぴくりと動く。
とはいえ起き上がるほどの筋力はないらしく、ベッドの上でもがくのみだ。
「ううう」
142: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/17(火) 23:21:21.13 ID:MeNYOwih0
「戸庭! 救急車! 呼ぶからな!」
そう言うアンチョビに、俺はおかしいと思い「会社に行く」と返した。
そういえば今日は監督とも会うのだ。
病院へ行っているような場合ではない。
143: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/17(火) 23:30:16.14 ID:MeNYOwih0
初めに見えたのは白い天井だった。
次に「戸庭っ」と声を上げるアンチョビの顔が見えて、首を動かすと室内にベッドが並んでいるのがわかった。
どうやらここは病院の一室らしかった。
144: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/17(火) 23:32:01.66 ID:MeNYOwih0
なるほど、俺は、過労で倒れた。
アンチョビはそれを、どうやら自分のせいだと感じているらしかった。
彼女らしいと思った。
しかしそれは決して事実ではない。
145: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/17(火) 23:34:14.63 ID:MeNYOwih0
「今日、監督と会うの何時からだっけ」
「――18時だ。自分も行くなんて言うなよ?」
先手を打たれてしまった。
293Res/190.44 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20