24: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2018/07/04(水) 22:29:46.64 ID:/XOMflwr0
私の言葉にさぞかしビックリしたのでしょう、彼は陶器のように固まってしまいました。ちひろさん、そんな「わお」って茶化すような顔をしないでください。とんでもないことを言ってしまった私だけれど、不思議と落ち着いていました。ここへ向かう時には、恥ずかしくて言えないと思っていたのですが。
陶器から生身に戻った彼は、少し恥ずかしそうに答えました。
25: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2018/07/04(水) 22:30:47.34 ID:/XOMflwr0
ちひろさんが、ソファでお話したらどうかと、私と彼に提案しました。
「Pさん、お仕事は大丈夫ですか?」
26: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2018/07/04(水) 22:32:32.86 ID:/XOMflwr0
「ずっと寮で過ごしてたの?」
お茶を啜ってから、彼は私に尋ねました。
27: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2018/07/04(水) 22:33:24.78 ID:/XOMflwr0
「歩いてきたんだろ。雨は強くなかった?」
28: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2018/07/04(水) 22:34:07.97 ID:/XOMflwr0
「あ、その髪留め」
彼がその沈黙を破りました。
29: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2018/07/04(水) 22:34:44.60 ID:/XOMflwr0
「いや、いつもの髪型もかわいいなぁって、いつも見るたびに思ってるけどな」
「ふぇっ」
30: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2018/07/04(水) 22:37:14.81 ID:/XOMflwr0
「とにかく、肇のどの髪型もかわいくて、俺は好きだよ」
彼はニコニコと笑って言いました。
31: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2018/07/04(水) 22:37:57.60 ID:/XOMflwr0
「Pさん」
「肇、どうした?」
32: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2018/07/04(水) 22:39:51.60 ID:/XOMflwr0
雨はいよいよ激しくなってきたのか、いよいよ外は真っ暗になってきました。こんなどしゃ降りだと、しばらく帰ることはできなさそうです。それとも、貴方に送って行ってもらおうかな。そうすれば、一秒でも長く貴方のそばにいられるから。
厚い厚い雲が、外では空を覆っています。その代わり、私の心を覆う雲はどこかへ行ってしまったようでした。貴方は私の心を覆う雲ではありませんでした。雲は私でした。私の本心を隠していたのが、その雲だったのです。
33: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2018/07/04(水) 22:40:42.51 ID:/XOMflwr0
おわり
34: ◆kBqQfBrAQE[sage]
2018/07/04(水) 22:42:32.51 ID:/XOMflwr0
タイトルの元ネタは、大滝詠一のアルバム『Go! Go! Niagara』(1976年)のナンバー、「こんな時、あの娘がいてくれたらナァ」から。
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