3: ◆eBIiXi2191ZO[saga]
2018/05/18(金) 22:37:26.49 ID:O0+7TRfs0
今日もまた、届けられたでしょうか。
次の方のインタビューが、続いています。私の身体は、浮いた感覚を残したまま。
ひな壇で、時が過ぎます。
4: ◆eBIiXi2191ZO[saga]
2018/05/18(金) 22:39:27.42 ID:O0+7TRfs0
「みなさん、お疲れさまでしたー!!」
5: ◆eBIiXi2191ZO[saga]
2018/05/18(金) 22:40:27.95 ID:O0+7TRfs0
プロデューサーさんは「よかった」ではなく「伝わった」と、そうおっしゃいます。その言葉に、私は安堵を覚えるのです。
私の歌は、画面の向こう側の皆さんのために。それを分かっているからこその「伝わった」
この上ない賛辞です。
6: ◆eBIiXi2191ZO[saga]
2018/05/18(金) 22:42:24.55 ID:O0+7TRfs0
プロデューサーさんは私の様子をうかがうと、挨拶まわりに中座するのでした。
私はコットンにクレンジングを含ませ、肌にあてます。ひやりとした感触。
先ほどまでの照明の熱さと、スタジオの熱気。
中てられた熱が洗い落とされるような、そんな気がします。
7: ◆eBIiXi2191ZO[saga]
2018/05/18(金) 22:43:57.30 ID:O0+7TRfs0
照明の熱さでひりつく肌に、化粧水を与えて。
鏡の中の私が、少しずつ変化していきます。
ええ、そうですね、と。気持ちをリセット。
そう、私は私のできることを。歌を皆さんに届けることを。それを嬉しく思えばよいのです。
8: ◆eBIiXi2191ZO[saga]
2018/05/18(金) 22:45:01.61 ID:O0+7TRfs0
私は慌てて振り向き、挨拶を返します。
「……高垣さん、おつかれさまです!」
9: ◆eBIiXi2191ZO[saga]
2018/05/18(金) 22:45:49.55 ID:O0+7TRfs0
そうおっしゃる高垣さん。その言葉に私は顔を上げました。
目の前には先ほどと変わらぬ、柔らかい笑み。
「歌織さん?」
10: ◆eBIiXi2191ZO[saga]
2018/05/18(金) 22:47:12.98 ID:O0+7TRfs0
ぽーん……
ピアノの音が、レッスンスタジオに響きます。
11: ◆eBIiXi2191ZO[saga]
2018/05/18(金) 22:48:27.11 ID:O0+7TRfs0
C(ツェー)の音に促され、私はピアノを弾き始めました。
『ローレライ』 ジルヒャーの曲です。
小さいころから弾き慣れた曲を、紡いでいきます。
一音、一音。私は、漂う音に身をゆだねるのでした。
12: ◆eBIiXi2191ZO[saga]
2018/05/18(金) 22:49:23.59 ID:O0+7TRfs0
「どうしたの? そんな浮かない顔して」
「……え」
ふいにこのみさんから出た言葉に、私は戸惑います。
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