58: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:24:50.24 ID:X17K8DuQ0
転ばないように、でも、できるだけ速く。
ここから一番近い駅へと息を切らして走る。
59: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:26:09.52 ID:X17K8DuQ0
ちょうど電車が入ってくるのが遠くに霞んで見える。
もう時間がない。間に合わなかったときのことなんて考えたくない。
60: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:27:15.87 ID:X17K8DuQ0
『さっき録ったから、電車の中で聞いてくれよ』
たったそれだけの言葉を、僕も言えずにいた。
61: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:28:08.89 ID:X17K8DuQ0
「……いつでも待ってるから」
その言葉は、祈りのように、静かに響いた。
62: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:28:56.70 ID:X17K8DuQ0
電車の発車音。
改札口を出て、賑わいだした街へと歩みを向ける。
63: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:30:21.65 ID:X17K8DuQ0
昼前の街は騒々と、少なくない人が僕の横を通り過ぎていく。
それでも僕の世界は、あの瞬間のまま止まっていて。
世界中にひとりだけみたいだなぁなんて小さくこぼした。
64: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:31:20.18 ID:X17K8DuQ0
いつだって鮮明に思い出せる。
誰よりも早く来て、必死に練習を繰り返す、光に満ちた瞳を。
勢いと努力で突き進もうとするくせに、できないときは弱気になって、できるとバカみたいに喜んで。
65: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:32:13.44 ID:X17K8DuQ0
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66: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:33:29.48 ID:X17K8DuQ0
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67: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:34:37.96 ID:X17K8DuQ0
流れ続けるバックミュージックに合わせて、サイリウムが揺れ続ける。
時間が来たのだろうか、誰かを始めとした小さな予感は歓声の波になって広がっていく。
その待ちきれない心の最高点で、アナウンスが響いた。
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