64: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:31:20.18 ID:X17K8DuQ0
いつだって鮮明に思い出せる。
誰よりも早く来て、必死に練習を繰り返す、光に満ちた瞳を。
勢いと努力で突き進もうとするくせに、できないときは弱気になって、できるとバカみたいに喜んで。
誰もが早くに諦めてしまう夢を、今もまだ必死に掴んで、憧れていたんだ。
きっと忍の努力の一端でしかないけれど、それでも隣で一緒に見てきた。
僕は君を傍で支えてあげられない。
僕は君を応援することもできない。
だからせめて、ひとつだけ願うことくらいはさせてくれないか。
砕けた想いが、言葉にならなかった想い出が、唇に唄を乗せる。
もう一度だけ伝えたかった心を確かめる。
僕の知らない街へと向かって走っていく電車を想う。
今頃、不器用な贈り物を聞いてくれている頃だろうか。
あんなに練習してたのに下手くそだなんて笑われたりしてないだろうか。
残された僕はひとり歩く。
さっきまで握っていた手から伝え合った互いの気持ち、確かな温度。
僕の手のひらには、微かな温もりだけが残った。
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