【モバマス】みく「みくは陽だまりの中で」
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3: ◆0vdZGajKfqPb[sage saga]
2018/02/24(土) 00:54:33.10 ID:d89W1gDH0
 前川みくはかつて、「猫の手アイドル」と呼ばれていた。
 特定のプロダクションと正規の契約を結ぶことをせず、「猫の手も借りたい」時に助っ人としてプロダクションに呼び出され、主役の前座を務めて去っていく。
 新人アイドルがデビューする時には「研修」としてライブバトルのやられ役となり、アイドルに自信をつけさせ、しばらくの間業界の先輩として芸能界のノウハウを教える。発展的なレッスンの相手をした後は、わずかな報酬を受け取ってプロダクションを去り、またどこかから声が掛かるのを待ちながら、野良ライブを続ける。
 飼い主なんていない、野良猫のようなアイドル。
 今のプロデューサーに拾われるまで、みくはそんな生活を送っていた。


4: ◆0vdZGajKfqPb[sage saga]
2018/02/24(土) 00:55:30.35 ID:d89W1gDH0
 プロデューサーに出会って、みくの人生は大きく変わった。
 CDデビューもすることができたし、お芝居の仕事もするようになった。
 トップアイドル……と名乗るには越えなければいけない壁はまだいくつかあるが、それなりに名の知れたアイドルにはなっていた。
 忙しい日々は続いていたが、かわいい衣装を着て、ファンや関係者からかわいいと言われるのは嬉しかった。充実した毎日を送れている、とみくは思う。
 めぐるましい、嵐のように過ぎていく日々。
以下略 AAS



5: ◆0vdZGajKfqPb[sage saga]
2018/02/24(土) 00:59:35.72 ID:d89W1gDH0
「遅いにゃあ……」
 打ち合わせがあるから、と千川ちひろに捕まった彼を、みくは待っていた。
 この後は、二人とも週明けまでオフ。今晩はこれから、一日遅れで誕生日を祝ってくれることになっていた。
「ちひろさん、目が笑ってなかったし……何かお説教かにゃあ?」
 待つ時間は、それほど苦ではない。絶対に来てくれるのがわかっているから、猶更。
以下略 AAS



6: ◆0vdZGajKfqPb[sage saga]
2018/02/24(土) 01:00:14.99 ID:d89W1gDH0
 ラテの残ったカップとバッグを脇に置き、そーっと猫に近づく。人に慣れているのか、目と鼻の先まで近づいても逃げ出すことはなかった。
「野良チャン……じゃないか、首輪してるもんね……迷い猫チャン?」
 飼い猫らしき彼は一鳴きして答えたが、今のみくに猫語を判別することはできなかった。ガラス玉のような青い目が、きれいな猫だった。
 猫がベンチの上を移動する。みくは一度首をかしげたが、その動きに合わせて影が動くのを見て納得した。どうやら彼は、迷子というより、遊びに来て日向ぼっこをしているらしかった。
「ごめんね、邪魔しちゃったみたいだにゃあ……よいしょ、と」
以下略 AAS



7: ◆0vdZGajKfqPb[sage saga]
2018/02/24(土) 01:00:54.84 ID:d89W1gDH0
 みくの言葉がわかるのか、わからないのか。猫はにゃあ、と頷くように歌った。幼い頃のように会話ができているようで、それがみくには嬉しかった。
「ふふ。君の飼い主さんは、どんな人なのかにゃあ?」
 そっと、背を撫でる。暖かな陽だまり。
「みくの飼い主チャンはね。んー……いい人、かな」
 飼い主……プロデューサーのことを、みくは一言で言い表すことができなかった。
以下略 AAS



8: ◆0vdZGajKfqPb[sage saga]
2018/02/24(土) 01:02:03.39 ID:d89W1gDH0
「みくをからかったり、変なことしたり。いじわるな人なんだけどね? たまーにね、すっごいかっこよく見えたり、きゅんってなるようなこと言ったり……一緒にいるとね、あったかくて、楽しいんだあ……」
 気がつくと、頭に浮かぶ人。最近気になる人。
「最初の衣装もね。君みたいに、チョーカーがある衣装だったの。それで、Pチャンにチョーカー着けてもらったんだ……嬉しかったなあ。Pチャンは気づいてないかもだけど、ずーっと一人だったみくに、首輪を着けてくれる人がいるんだ、って思って……それからライブ前は、いつもPチャンにリボンを結んでもらうの」
 プロデューサーに結んでもらうリボン。それは、みくと彼との絆。
 笑ったり泣いたりした、二人の歴史の繋がりだった。


9: ◆0vdZGajKfqPb[sage saga]
2018/02/24(土) 01:02:39.47 ID:d89W1gDH0
「……お前のアレ、そんな意味があったのか」
「ふにゃあああ!?」
 全速力で後ろを振り向く。
 二人分のホットコーヒーを持ったプロデューサーが、ベンチの後ろに立っていた。いつからだろう。ひどく顔が熱い。
「ちょっ、いや、その! ちが……や……違わない、ケド……」
以下略 AAS



10: ◆0vdZGajKfqPb[sage saga]
2018/02/24(土) 01:05:21.96 ID:d89W1gDH0
 気づかれてしまった。二週間前にも、ライブ以上の首元のリボンを結んでもらっているのだ。
 密かに、みくに勇気をくれていた行動。秘密の儀式。
「……そんな顔するなよ。別に、もうしないとかじゃないんだから」
「え、ホントに?」
「嘘ついてどうする。大事な儀式なんだろ」
以下略 AAS



11: ◆0vdZGajKfqPb[sage saga]
2018/02/24(土) 01:07:02.99 ID:d89W1gDH0
「……悪かったよ。たまたま、みくが猫と話してるとこが見えたもんだから、つい……」
「んーん。いいよ、怒ってるわけじゃないし」
 なんとなく、気まずい。感謝しているのは事実だけれど、ああいうことはもっと、正面からちゃんと向き合って伝えたかった。
「ちひろさん、なんて?」
「うん? あー、まあ……みくのこと、ちゃんと見てやってください、とかそういう」
以下略 AAS



12: ◆0vdZGajKfqPb[sage saga]
2018/02/24(土) 01:08:58.36 ID:d89W1gDH0
「それで、今年は何がいいんだ? 誕生日プレゼント」
「うーん……」
 ハンバーグが最初に浮かんだが、あまり俗物的なのも違う気もした。
「それじゃあ……約束して?」
「約束?」
以下略 AAS



13: ◆0vdZGajKfqPb[sage saga]
2018/02/24(土) 01:11:38.46 ID:d89W1gDH0
「それじゃあ、晩ごはん行こ?」
「おう。バレンタインのライブも成功したし、うまいとこ連れてってやる」
「ふふ、適当に期待しておくにゃあ!」
 今、アイドルとしてのみくの現在地はどこなのだろう。
 これから、前川みくはどうなるのだろう。
以下略 AAS



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