84:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 23:41:42.45 ID:QxgIwWOp0
ライブ会場へと着くといよいよ息が苦しくなっていき、あいさつ回りが終わるころには、
「大丈夫か、森久保」
85:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 23:42:56.84 ID:QxgIwWOp0
「そんなに屁理屈が言えるなら大丈夫そうだな。……って本当に少し顔色悪いな。大丈夫か?
まだ本番まで時間あるし、風邪薬貰ってこようか?」
プロデューサーさんが心配そうに覗き込みます。
86:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 23:43:59.96 ID:QxgIwWOp0
ここ以外にどこで見つめるんだと笑うプロデューサーさんの顔を、
私は、一世一代のにらめっこをする気で、それこそ心の中で大きく息を吸ってから、見つめました。
プロデューサーさんは、私と初めて出会った時と同じ、真剣な眼差しで私のことを見ていました。
87:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 23:45:31.32 ID:QxgIwWOp0
それからまもなく、イベントが始まりました。
私は、他のアイドルやプロデューサーに紛れ込んで、控室から映像越しに、ライブの様子を見ました。
控室には緊張した空気が張りつめていました。
88:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 23:46:33.43 ID:QxgIwWOp0
しばらく進行すると、いかにも内気そうなアイドルの子が、
あまりの緊張ゆえにステージ上で震えながら、涙を流してしまうというハプニングが起こりました。
「○○ちゃん、大変そう、頑張って」
89:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 23:47:06.96 ID:QxgIwWOp0
私達に、あの子の苦悩がわかるでしょうか。
あの子が泣いているから、失敗しているから、私たちも失敗して大丈夫だと、笑っている。
90:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 23:49:20.92 ID:QxgIwWOp0
施設内を放浪し、ステージ会場から遠く離れた果ての場所に、
誰にも使われていなさそうなベンチを見つけ、私はそこで時間が経つのを待ちました。
ライブ当日に離れのようなこの場所に来る人は、私くらいで、人の目はありませんが、
91:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 23:50:28.23 ID:QxgIwWOp0
それから色々考えて、やはりライブに出ることは不可能だと判断したので、
私は、ライブの時間になっても、ここでじっとしていよう、と決意しました。
隠れはせず、それこそベンチにじっと座っているだけですが、
92:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 23:51:39.12 ID:QxgIwWOp0
プロデューサーさんがやってきたのは、それから十七分後。私のライブ開始時刻の三十分前でした。
「森久保、こんなところにいたのか探したぞ」
93:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 23:53:45.42 ID:QxgIwWOp0
席を立ち、ライブ会場へと歩き始めました。
一歩進むことに、ピアスが、身体が、重さを増していきます。
私はプロデューサーさんにばれないように、身体を引きずり歩きました。
94:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 23:55:39.89 ID:QxgIwWOp0
再び揺れ始めた選択の中で、私は頭を抱え、その迷いを森久保は隠し、
プロデューサーさんとライブ前の最終確認をしていると、
出番一つ前の子のライブが始まり、あっという間に、終わりました。
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