7:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:15:03.48 ID:3iKMEwHU0
ペットボトルを渡すと、さき部屋いっといてええよ、と言われた。
眠り込むまではいかなそうだし、お言葉に甘える。ここ寒いし。
洗面所からダイニングを抜けて、奥の部屋へ。ワンルームではあるけれど、広めで住みやすそうだ。
思っていたより片付いていて、こざっぱりしている。
8:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:15:29.92 ID:3iKMEwHU0
コタツ布団を捲り、中を覗き込む。中央から伸びるコードを見つけた。
のろのろ四つん這いで回り込み、ぱちりとスイッチをいれる。
すぐには明るくならない。コートを脱いで、空いているスタンドにかけさせてもらった。
さむいさむい、と広い面からコタツに入り、足を伸ばした。
9:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:16:13.18 ID:3iKMEwHU0
「お、電源わかった?」
奈緒さんがペットボトルの水を飲みながら、向かいに潜り込む。顔色は大分良くなっていた。
さっむいなぁ、と言いながら、中で私の足にぶつかってくる。
余裕が出てきた証拠だろう。無視して足を引っ込める。
10:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:16:40.53 ID:3iKMEwHU0
「あっ、そや、エミリーといえば……」
奈緒さんがだらしない姿勢でリモコンへ手を伸ばす。
ぴっと音を立てて、壁掛けテレビの電源が点いた。何度かザッピングして、目当ての番組に辿り着く。
11:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:17:12.30 ID:3iKMEwHU0
二人でしばし、コーナーが終わるまでぼうっと眺めた。
出来上がったお皿が焼き上がるのは来週らしい。きっと素敵なものに仕上がっているだろう。
「癒されるなぁ。エミリーはめっちゃ変わったけどなにも変わっとらんわ」
12:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:17:38.75 ID:3iKMEwHU0
奈緒さんはポツポツと指折りしながら、誰々はやめて、誰々はこんな仕事、と繰り返す。
思っていたよりもこの手の仕事をやめてしまった人もいた。
10年経っているのだから、当たり前かもしれない。
指折り数えていた奈緒さんは、むむっと眉を寄せる。突然、両手をあわせてぱちんと鳴らした。
13:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:18:20.85 ID:3iKMEwHU0
「うわはは、衣装、赤っ! めっちゃアイドルしとるやん!」
私達のはじめての単独ライブ――『HAPPY PERFORM@NCE』だ。
場所は中野サンプラザ。今はもうない。
偶々通りかかった時に建設中のフェンスがあって、改装でもしてるのかな、と思っていたら、気づいたときには全然違う建物になっていたのだ。
14:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:19:16.75 ID:3iKMEwHU0
「奈緒さんこそ、ふとももをあんなに露わにして……」
「やばいよなぁ。今やったら大根が2本生えてるからつまみ出されるで」
「……30越えると痩せるのも大変だと聞きますけど。そろそろ対策しておいた方がいいのでは」
「ま、まだ大丈夫、あと2年あるから!
っていうか私の話はええからテレビの方を……うわー、やめてぇ! 横山奈緒をアップにせんといてぇ!」
15:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:20:18.56 ID:3iKMEwHU0
それからも節々で盛り上がったり、悲鳴をあげたり、賑やかな時間が続く。
何度目かのMCが入り、落ち着いた。奈緒さんが渇いた笑いを漏らす。
「いやぁ、それにしても、凄まじいな……自分でみよう言い出したけども、ここまでとは思わんかったで」
「同感です。稽古より疲れましたよ……」
16:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:20:47.71 ID:3iKMEwHU0
ディスクを入れ替え、MCが続く。話題にあがった静香のサプライズ登場が始まっていた。
過労で出演が見送られると発表されたのだけど、這ってでも出るって聞かなかったもんな。
……静香とは色々と衝突してやりあったなぁ、なんて思い出す。
今でなら、お互い子どもだったんだろうな、なんて総括出来ちゃうけれど、そんな答えが通じるような年齢でも気性でもないし。
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