北条加蓮「アタシ努力とか根性とかそーゆーキャラじゃないんだよね」
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◆ikbHUwR.fw
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2017/12/31(日) 21:44:05.66 ID:vyCd+JK40
「ここ、かな?」
スカウトされた次の日、アタシはCGプロの事務所の前に立っていた。
昨日のことはなにかの間違いだ、夢でも見たと思って忘れよう――そう思っていたはずなのに。
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AAS
8
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◆ikbHUwR.fw
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2017/12/31(日) 21:47:37.04 ID:vyCd+JK40
「あ、あの、ちょっといいですか?」
見ると、高校生ぐらいの女の子がいた。かなりボリュームのある長い髪を後ろでまとめていて、まっすぐに切りそろえた前髪の下から意志の強そうな太い眉がのぞいている。あたりに他に人は見当たらない。
「ええと、アタシ?」
以下略
AAS
9
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◆ikbHUwR.fw
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2017/12/31(日) 21:52:22.96 ID:vyCd+JK40
「ああ、来てくれたんだ。じゃあ、ついてきて」
ろくにあいさつもしないままにプロデューサーが歩き出す。アタシはあわててそのあとを追いかけた。廊下を歩き、エレベーターに乗り、4階でおりてひとつの部屋に入る。
あまり広くはない部屋だった。入ってすぐのところに小さめのコーヒーテーブルがあり、それを挟み込むようにソファがふたつ置かれていた。奥の方に机がひとつ見える。
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AAS
10
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◆ikbHUwR.fw
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2017/12/31(日) 21:54:27.87 ID:vyCd+JK40
「働かざること山のごとし、双葉杏だよ」
ソファに寝たままの少女が言った。
キャッチコピーみたいな前置きの意味はわからなかった。
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AAS
11
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◆ikbHUwR.fw
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2017/12/31(日) 21:56:29.73 ID:vyCd+JK40
「ああ、森久保は最初はいつもそんな感じだから、気にしなくていいよ」
極度の人見知りということだろうか。それでアイドルなんてできるのかな? そういえばついさっき本人がアイドル辞めたいとか言ってたけど……
「……ねえ、加蓮ちゃん、新人さんってことだよね。ウチの部署でいいわけ?」
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AAS
12
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◆ikbHUwR.fw
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2017/12/31(日) 21:58:42.83 ID:vyCd+JK40
頭が混乱した。アタシはアイドル事務所にやってきたはずなんだけど、それも大手の。
そうか、候補生というものかもしれない。こういうところでは、デビューを目指して日々レッスンに励んでいるアイドル候補生がいると聞いたことがある。
「ええと、レッスンとかは?」
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AAS
13
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◆ikbHUwR.fw
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2017/12/31(日) 22:01:35.98 ID:vyCd+JK40
「これ、契約書」
プロデューサーが書類をアタシに差し出す。
「内容をよく読んで、印鑑は……持ってきてないよな。親御さんの書く欄もあるから、いちど持って帰って、今度書いてきてもらって」
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AAS
14
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◆ikbHUwR.fw
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2017/12/31(日) 22:05:15.55 ID:vyCd+JK40
考えてみればおかしな話だ。
仕事をしていない、つまり事務所に利益をもたらしていないのに、最低限の給料が出る。それでは事務所にとって、そのアイドルの存在は、マイナスにしかならない。
だったら、なんのために契約なんて交わす? 芸能事務所だってひとつの会社である以上、目的は利益を出すことのはずだ。
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AAS
15
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◆ikbHUwR.fw
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2017/12/31(日) 22:10:56.79 ID:vyCd+JK40
「書いてきたよ、これでいい?」
翌日、再び事務所におもむいたアタシは、必要事項を記入した契約書をプロデューサーに突きつけた。
保護者の欄は自分で記入しようとも思ったが、大人っぽい字を書けないからすぐにバレそうだという少し情けない理由もあって、結局、「なにも言わずにこれ書いて」と母に頼み込んだ。
あれこれ質問された場合の言い訳もいくつも用意していたけど、母は本当になにも問いかけてくることなく、『保護者の同意』に名前を記入し、アタシに返してきた。少し、笑っていたような気がする。
以下略
AAS
16
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◆ikbHUwR.fw
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2017/12/31(日) 22:13:58.18 ID:vyCd+JK40
そうして、アタシは平日の学校が終わったあとは、事務所に顔を出すようになった。
『仕事がない』というのは一種の謙遜か言葉の綾というもので、本当はある程度アイドルらしいこともやってるんじゃないか、そんな淡い期待は、あっけなく裏切られる。
杏は本当にゲームをしてるか昼寝してるかのどっちかだったし、乃々ちゃんはいつも机の下に潜り込んで少女漫画を読んでいた。
以下略
AAS
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