北条加蓮「アタシ努力とか根性とかそーゆーキャラじゃないんだよね」
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◆ikbHUwR.fw
[saga]
2017/12/31(日) 22:01:35.98 ID:vyCd+JK40
「これ、契約書」
プロデューサーが書類をアタシに差し出す。
「内容をよく読んで、印鑑は……持ってきてないよな。親御さんの書く欄もあるから、いちど持って帰って、今度書いてきてもらって」
「アタシ、アイドルやるなんて、言ってないから」
アタシはプロデューサーの言葉をさえぎるように言った。
元々そのつもりだった。アタシは、アタシにあるという素質とはなにかを訊きにきただけだ。
それも、もう訊く気はうせていた。努力や根性が嫌いだから? だからこの部署で怠ける素質があるってこと?
「帰る」
「加蓮」
プロデューサーがドアの前に立ちふさがる。
「気やすく呼ばないでよ」
「これは仮契約の契約書で、契約の期間は1ヶ月。試用期間みたいなもので、これが終わってからまた、続けるか辞めるか決められる」
「だからやらないって言ってるでしょ!」
机の影から様子をうかがっていたらしい、乃々ちゃんがびくりと体を跳ねさせるのが視界のすみに映った。
「うるさいなあ、もう」
杏がうんざりしたような声を出す。
「加蓮ちゃん高校生でしょ、お金がありあまってるなんてことないよね。ウチの部署は、たまにきて適当に遊んでるだけでも最低限のお給料は出るから、アルバイトだと思えば、こんな楽な仕事は他にないよ。杏は関係ないから、加蓮ちゃんがアイドルになりたくないなら、それはそれで構わない。だけどさ、やらない理由ってなんなのかな?」
「関係ないなら、そんなのどうでもいいでしょ」
「まあそうだけどね。加蓮ちゃん、自分でもわかってないんじゃないかって思ってさ。いちどよく考えてみたら?」
アタシはプロデューサーを押しのけて部屋を出た。小走りでエレベーターまで行き、追いかけてきたプロデューサーの目の前で扉を閉じた。
1階で降りると、階段を使ったらしいプロデューサーが待ち構えていた。建物を出たところで、アタシは、「ついてこないで」と言った。
「これだけ、持って行ってほしい」
プロデューサーは息を切らせながら契約書を押し付けてきた。これ以上問答するのも面倒だったから、アタシはそれを受けとって手荒に自分のバッグに押し込んだ。
「これで満足?」
アタシは駅に向かって歩き出した。プロデューサーは、もう追いかけてはこなかった。
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