北条加蓮「アタシ努力とか根性とかそーゆーキャラじゃないんだよね」
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12: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2017/12/31(日) 21:58:42.83 ID:vyCd+JK40
 頭が混乱した。アタシはアイドル事務所にやってきたはずなんだけど、それも大手の。
 そうか、候補生というものかもしれない。こういうところでは、デビューを目指して日々レッスンに励んでいるアイドル候補生がいると聞いたことがある。

「ええと、レッスンとかは?」

「そっちは申請すれば参加できるんだったかな? もちろん、杏も乃々も受けないけどね」

「じゃあ、なにをするの?」

「ゲームやったりとか、漫画読んでたりとか、あとは……寝てるかな」

「……なにそれ」

「想像してたのと違う?」

 杏が小さく笑った。

「だってそんなの、アイドルっていえないでしょ」

「……ふーん。じゃあ、加蓮ちゃんの思うアイドルって、どんなもの?」

「それは……テレビに出たりして、歌ったり、踊ったり……」

「それはアイドルそのものじゃなくて、アイドルのお仕事だね」

「だったら……杏はどう思うの? アイドルってなに?」

「ん、アイドルの事務所と契約を交わしたらアイドルだよ」

 さも当たり前だろう、というふうに言うので、アタシは言葉を失った。

「加蓮ちゃんが言ったような、テレビに出たりするアイドルってのは、全体からしたらほんのひとにぎりの売れっ子なんだよね。だったら、売れてないアイドルはアイドルじゃないのかな?」

「そうは言ってないよ。テレビってのは、たとえばの話で、他にも小さいお仕事だってあるだろうし……」

「じゃあ、量かな? 仕事の量が少なかったらアイドルじゃない?」

「……そんなことない」

「量は関係ないってことだね。それなら、仕事がぜんぜんなくたって、アイドルでしょ」

 プロデューサーがため息をついて、「あまり新人をいじめるなよ」と言った。これまでアタシと杏のやりとりを黙って聞いていたらしい。
 杏は「へいへい」と気のない返事をして、携帯ゲーム機の電源を入れた。



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