北条加蓮「アタシ努力とか根性とかそーゆーキャラじゃないんだよね」
1- 20
9: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2017/12/31(日) 21:52:22.96 ID:vyCd+JK40
「ああ、来てくれたんだ。じゃあ、ついてきて」

 ろくにあいさつもしないままにプロデューサーが歩き出す。アタシはあわててそのあとを追いかけた。廊下を歩き、エレベーターに乗り、4階でおりてひとつの部屋に入る。

 あまり広くはない部屋だった。入ってすぐのところに小さめのコーヒーテーブルがあり、それを挟み込むようにソファがふたつ置かれていた。奥の方に机がひとつ見える。

「ん、おかえりー……って、後ろはどちらさま?」

 ソファに寝そべった少女が言った。かなり背が低くて、クリーム色の長い髪をふたつに分けて束ねている。手には携帯ゲーム機を持っていた。小学生ぐらいに見えるけど、この子も所属アイドルなのだろうか。

「昨日スカウトした子だよ。名前は、名前は…………名前?」

 プロデューサーが口ごもる。そういえば、アタシはまだ、いちども名前を名乗っていない。

「あの、アタシは――」

「あ、自己紹介するならちょっと待って。おーい、森久保、出てこーい」

 プロデューサーが机に向けて呼びかけた。なんで机に? もりくぼ?
 疑問はすぐに解けた。机の下からもぞもぞと、女の子が這い出してきたからだ。
 この子もソファの子ほどではないにしろ、かなり小柄だった。

「うう……なんですか? もりくぼの憩いのひとときを邪魔するんですか? いぢめですか? ドメスティックバイオレンスですか?」

「家庭を築いた覚えがないけど」

 森久保、と呼ばれた女の子が立ち上がり近づいてくる、と思ったら、まだ距離があるところでぴたりと立ち止まる。顔は前を向いているが、目が泳いでいた。
 プロデューサーがこちらに向き直り、小さくうなずく。もう名乗っていいということだろう。

「えっと……北条加蓮、です」

 他になにを言えばいいものかわからず、アタシは口をつぐんでしまった。



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
59Res/85.31 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice