北条加蓮「アタシ努力とか根性とかそーゆーキャラじゃないんだよね」
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◆ikbHUwR.fw
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2017/12/31(日) 21:36:22.08 ID:vyCd+JK40
仲のよかった子を、ある日から突然見かけなくなる。長期の入院をしていると、ときどきそんなことが起こる。
いつものように病室をたずねてみると、まるで元からそこには誰もいなかったかのように、空っぽのベッドだけが残されている。
「あの子はどこへ行ったの?」と看護師さんに訊いてみると、決まって、「退院した」と返ってきた。
『退院』にはふた通りの意味がある。
以下略
AAS
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◆ikbHUwR.fw
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2017/12/31(日) 21:38:55.62 ID:vyCd+JK40
病院の消灯は早い。アタシが別荘にしていたところでは、午後の9時が消灯時間だった。
「その時間に必ず寝ろ」というわけではない。部屋の明かりが落とされるだけで、枕元の読書灯や、テレビは付けることができた。数時間おきに看護師さんが見回りにやってくるけど、よほど真夜中でない限り、とやかく言われることもない。
とはいえ、朝の回診やらなんやらで、起こされる時間もほぼ決まっていたため、自然と規則正しい生活が体に染み付いて、消灯に合わせて眠る習慣ができていた。
ただ、仲よくしていた子が、いなくなったと気付いてしまった夜には、なかなか眠ることができなかった。
以下略
AAS
7
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◆ikbHUwR.fw
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2017/12/31(日) 21:44:05.66 ID:vyCd+JK40
「ここ、かな?」
スカウトされた次の日、アタシはCGプロの事務所の前に立っていた。
昨日のことはなにかの間違いだ、夢でも見たと思って忘れよう――そう思っていたはずなのに。
以下略
AAS
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◆ikbHUwR.fw
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2017/12/31(日) 21:47:37.04 ID:vyCd+JK40
「あ、あの、ちょっといいですか?」
見ると、高校生ぐらいの女の子がいた。かなりボリュームのある長い髪を後ろでまとめていて、まっすぐに切りそろえた前髪の下から意志の強そうな太い眉がのぞいている。あたりに他に人は見当たらない。
「ええと、アタシ?」
以下略
AAS
9
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◆ikbHUwR.fw
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2017/12/31(日) 21:52:22.96 ID:vyCd+JK40
「ああ、来てくれたんだ。じゃあ、ついてきて」
ろくにあいさつもしないままにプロデューサーが歩き出す。アタシはあわててそのあとを追いかけた。廊下を歩き、エレベーターに乗り、4階でおりてひとつの部屋に入る。
あまり広くはない部屋だった。入ってすぐのところに小さめのコーヒーテーブルがあり、それを挟み込むようにソファがふたつ置かれていた。奥の方に机がひとつ見える。
以下略
AAS
10
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◆ikbHUwR.fw
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2017/12/31(日) 21:54:27.87 ID:vyCd+JK40
「働かざること山のごとし、双葉杏だよ」
ソファに寝たままの少女が言った。
キャッチコピーみたいな前置きの意味はわからなかった。
以下略
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◆ikbHUwR.fw
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2017/12/31(日) 21:56:29.73 ID:vyCd+JK40
「ああ、森久保は最初はいつもそんな感じだから、気にしなくていいよ」
極度の人見知りということだろうか。それでアイドルなんてできるのかな? そういえばついさっき本人がアイドル辞めたいとか言ってたけど……
「……ねえ、加蓮ちゃん、新人さんってことだよね。ウチの部署でいいわけ?」
以下略
AAS
12
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◆ikbHUwR.fw
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2017/12/31(日) 21:58:42.83 ID:vyCd+JK40
頭が混乱した。アタシはアイドル事務所にやってきたはずなんだけど、それも大手の。
そうか、候補生というものかもしれない。こういうところでは、デビューを目指して日々レッスンに励んでいるアイドル候補生がいると聞いたことがある。
「ええと、レッスンとかは?」
以下略
AAS
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◆ikbHUwR.fw
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2017/12/31(日) 22:01:35.98 ID:vyCd+JK40
「これ、契約書」
プロデューサーが書類をアタシに差し出す。
「内容をよく読んで、印鑑は……持ってきてないよな。親御さんの書く欄もあるから、いちど持って帰って、今度書いてきてもらって」
以下略
AAS
14
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◆ikbHUwR.fw
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2017/12/31(日) 22:05:15.55 ID:vyCd+JK40
考えてみればおかしな話だ。
仕事をしていない、つまり事務所に利益をもたらしていないのに、最低限の給料が出る。それでは事務所にとって、そのアイドルの存在は、マイナスにしかならない。
だったら、なんのために契約なんて交わす? 芸能事務所だってひとつの会社である以上、目的は利益を出すことのはずだ。
以下略
AAS
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